日本門脈圧亢進症学会雑誌
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23 巻, 1 号
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特別寄稿
Editorial
原著
  • 重福 隆太, 高橋 秀明, 中野 弘康, 服部 伸洋, 池田 裕喜, 渡邊 綱正, 松永 光太郎, 松本 伸行, 奥瀬 千晃, 佐瀬 茂, ...
    2017 年 23 巻 1 号 p. 22-32
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    【背景】門脈圧亢進症では背景肝疾患の病因が重要で,病態により治療効果や再発率に影響すると考えられる.しかしアルコール性肝硬変(AL-LC)とC型肝硬変(C-LC)における血行動態の相違は明らかではない.【目的】AL-LC,C-LCにおいてXenon CT(Xe-CT)を用い食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy;EIS)前後の肝血流量を比較し血行動態の違いを明らかにする.

    【方法】対象はAL-LC 18例(男17例),C-LC 19例(男10例).Xe-CTは,既報(Med Phys. 2008;35:2331)のごとく,治療前と治療1週後で門脈,肝動脈組織血流量(PVTBF,HATBF;ml/100 ml/min)を測定し,さらにPVTBF/HATBF(P/A)ratioを算出しAL-LCとC-LCの両者を治療前後で比較した.【結果】AL-LCの治療前/後の肝血流量は,PVTBF 25.6±6.3/29.8±6.2(p=0.006),HATBF 21.0±10.1/19.5±5.6,P/A ratio 1.4±0.7/1.7±0.7,C-LCの治療前/後の肝血流量は,PVTBF 28.9±9.4/29.2±8.2(NS),HATBF 24.1±16.1/18.5±8.2,P/A ratio 1.6±0.8/1.8±0.9.AL-LC群で再発率が高い傾向であった(p=0.08).【考察】AL-LCは入院後断酒しEISで側副血行路を閉鎖することでPVTBFが増加する可能性が推察された.しかしAL-LCは短期再発し,退院後の断酒継続ができていないことが主要因と考えられた.

    【結論】C-LCとは異なり,AL-LCでは断酒によりEISで増加した門脈血流を受容しやすくなり,EIS後に門脈血流が増加した可能性が示唆された.

  • 小笠原 光成, 廣瀬 享, 岩﨑 信二, 越智 経浩, 西原 利治
    2017 年 23 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration;B-RTO)はシャント脳症の治療としても有効とされている.しかしシャント血管の完全閉塞により術後の門脈圧上昇を来し,難治性腹水や静脈瘤の悪化等の合併症を経験することがある.この圧上昇を回避するために,我々はシャント脳症に対し,non-fibered interlocking detachable coil(以下IDC)を用いた部分閉塞によるB-RTO(以下partial B-RTO)を施行しその効果を検討した.内科的治療に抵抗性を示し,左腎静脈を排血路とする肝性脳症患者11例を完全閉塞群5例とpartial B-RTO群6例に分類にて比較検討した.血中アンモニア濃度は術前後で有意に低下し(完全閉塞群:p<0.01, partial B-RTO群:p<0.05),平均血中アンモニア濃度低下率は完全閉塞群(48.6%)とpartial B-RTO群(42.0%)には有意差は認められなかった.改善効果は半年以上持続した.完全閉塞群では難治性腹水,食道静脈瘤の悪化や血栓などの合併症を2例で認めたが,partial B-RTO群では認めなかった.non-fibered IDCを用いたpartial B-RTOはシャント脳症に対し安全で有効な治療法であり,患者のQOLに有用であると考えられた.

  • 馬場 俊之, 魚住 祥二郎, 杉浦 育也, 吉田 仁
    2017 年 23 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    門脈血栓症を合併した肝硬変15例に対しダナパロイドナトリウムによる抗凝固療法を行った.初回治療における15例の治療効果は消失:2例,縮小10例,不変:3例であり,消失・縮小は15例中12例(80.0%)であった.不変の3例はいずれも海綿状血管増生を伴っており,器質化血栓の存在が示唆された.さらに,ワーファリンカリウムによる維持療法が行われなかった7例中2例に門脈血栓の増大,11例中3例に臨床症状の悪化を認めたが,維持療法が行われた4例ではいずれも認められず,維持療法は門脈血栓の増大,臨床症状の悪化を予防できる可能性がある.ダナパロイドナトリウムは門脈血栓症に有効であるが,海綿状血管増生を伴うような器質化血栓には積極的な治療の適応はなく,その再発・増悪には維持療法を考慮する必要がある.

臨床研究
  • 林 星舟, 今村 潤, 木村 公則
    2017 年 23 巻 1 号 p. 50-58
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    短絡路閉鎖後に長期的に生じる門脈血行動態の変化に着目した臨床研究は食道静脈瘤を除き少ない.胃(脾)腎短絡路などの下行性側副血行路に対して外科的短絡路閉鎖術を行った13例(手術群),B-RTOを施行した111例(B-RTO群)を対象に治療後門脈血行動態の長期的変化について後方視的に検討した.1)手術群では治療前に23%で治療対象以外の側副血行路を認め,治療後経過観察中に46%で新たな側副血行路が出現した.B-RTO群では治療前に54%で治療対象以外の側副血行路を認め,治療後経過観察中に57%で新たな側副血行路が出現した.2)観察終了時点で画像上側副血行路を認めなかったのは手術群の54%,B-RTO群の16%であった.3)累積生存率(5年/10年)は手術群で91.7%/40.1%,B-RTO群で60.6%/36.3%であり,HCC合併,手術群,女性,Child-Pugh grade Aの4因子が生命予後に寄与する独立因子であった.下行性側副血行路に対する短絡路閉鎖治療後には多くの症例で新たな側副血行路が形成されたが,一部症例では側副血行路の形成なく経過し,その頻度は手術群で有意に高い結果であった.

  • 福本 晃平, 下河邊 嗣人, 北村 陽子
    2017 年 23 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    【目的】食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法・結紮術同時併用療法(endoscopic injection sclerotherapy with ligation:EISL)は,EIS後の穿刺部を結紮することで抜針後に圧迫止血が不要となり,硬化剤の停滞を良好にできると考えられる.EISLの有用性を検討するため,EISと治療結果を比較した.

    【対象・方法】EISの穿刺部にEVLを施行したEISL群13例を対象とし,EISの穿刺部をバルーンで圧迫したEIS群13例と比較した.【結果】治療回数,硬化剤使用量,鎮静剤使用量は有意差を認めなかった.治療時間はEISL群で有意に短く(p=0.0087),硬化剤停滞時間はEISL群で有意に長かった(p=0.0226).偶発症は両群とも認めなかった.【結論】EISLはEISと比較して治療時間が短く,硬化剤の血管内への停滞を良好にする効果が期待でき,有用な治療法である.

症例報告
  • 佐藤 俊輔, 玄田 拓哉, 村田 礼人, 廿楽 裕徳, 成田 諭隆, 永原 章仁
    2017 年 23 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    症例は50歳代の男性.1994年よりC型肝硬変の診断で当科に通院.2010年頃から血中アンモニア値が200 μg/dl以上を示すようになり,各種薬物治療にもかかわらず肝性脳症で頻回に入退院を繰り返すようになった.腹部CT検査で左胃静脈を供血路とし左腎静脈を排血路とする最大径30 mm大の巨大胃腎短絡路の発達を認めたため,門脈大循環短絡路に起因する肝性脳症と診断,2012年3月にB-RTOを施行した.B-RTO後6か月間はアンモニア値が100 μg/dl前後に低下していたが,その後上昇傾向となり再び肝性脳症で入院を要した.この間,CT検査で下腸間膜静脈を中心とした新たな側副血行路の発達を継時的に観察し得た.門脈大循環短絡路に起因する肝性脳症に対するB-RTOは多くの場合短期的に有効とされているが,本症例のように短絡路径が大きい場合,時間経過に伴い新しい側副血行路の発達による症状再発が認められたことから,治療後の門脈圧亢進に対する対策や背景肝疾患に対する根本的治療が必要と考えられた.

  • 大山 淳史, 西村 守, 狩山 和也, 能祖 一裕, 栗原 英祐, 大西 理乃, 湧田 暁子, 酒井 亮, 羽井佐 実, 東 俊宏
    2017 年 23 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性.C型肝硬変で通院加療中,大腸癌を発症し大腸癌切除および人工肛門造設術を行ったところ,門脈血栓症とそれに伴う門脈圧亢進によると考えられる人工肛門静脈瘤を認めた.同部位より頻回に出血を繰り返し貧血の進行を認めたため,経皮経肝静脈瘤塞栓術(Percutaneous transhepatic obliteration:PTO)に続いて門脈血栓除去術を同時に行い一定期間の止血を得た.術後はワルファリン内服を開始し,門脈血栓症は一時縮小傾向であった.術後4か月目に人工肛門静脈瘤の再燃を認め,PTOおよび血栓除去術を再度施行した.人工肛門静脈瘤は稀な病態であるが,非代償性肝硬変症ではしばしば経験される合併症である.PTOおよび門脈血栓除去術は繰り返す人工肛門静脈瘤の一治療選択肢になり得ると考えられた.

  • 北川 翔, 佐藤 隆啓
    2017 年 23 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    69歳女性.C型肝硬変,肝内・肝外門脈血栓症を背景とした直腸静脈瘤に対し,2か月前に内視鏡的硬化療法および内視鏡的結紮術を施行され,1か月前から間欠的な血便が出現していた.内視鏡検査では上部直腸からS状結腸にかけて出血を伴うdiffuse colonic vascular ectasiaの所見を認め,止血目的に部分的脾動脈塞栓術を施行した.現在術後38か月が経過したが,出血のエピソードを認めず外来通院中である.

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