2017 年 23 巻 1 号 p. 41-49
門脈血栓症を合併した肝硬変15例に対しダナパロイドナトリウムによる抗凝固療法を行った.初回治療における15例の治療効果は消失:2例,縮小10例,不変:3例であり,消失・縮小は15例中12例(80.0%)であった.不変の3例はいずれも海綿状血管増生を伴っており,器質化血栓の存在が示唆された.さらに,ワーファリンカリウムによる維持療法が行われなかった7例中2例に門脈血栓の増大,11例中3例に臨床症状の悪化を認めたが,維持療法が行われた4例ではいずれも認められず,維持療法は門脈血栓の増大,臨床症状の悪化を予防できる可能性がある.ダナパロイドナトリウムは門脈血栓症に有効であるが,海綿状血管増生を伴うような器質化血栓には積極的な治療の適応はなく,その再発・増悪には維持療法を考慮する必要がある.