2017 年 23 巻 1 号 p. 69-73
症例は70歳,男性.C型肝硬変で通院加療中,大腸癌を発症し大腸癌切除および人工肛門造設術を行ったところ,門脈血栓症とそれに伴う門脈圧亢進によると考えられる人工肛門静脈瘤を認めた.同部位より頻回に出血を繰り返し貧血の進行を認めたため,経皮経肝静脈瘤塞栓術(Percutaneous transhepatic obliteration:PTO)に続いて門脈血栓除去術を同時に行い一定期間の止血を得た.術後はワルファリン内服を開始し,門脈血栓症は一時縮小傾向であった.術後4か月目に人工肛門静脈瘤の再燃を認め,PTOおよび血栓除去術を再度施行した.人工肛門静脈瘤は稀な病態であるが,非代償性肝硬変症ではしばしば経験される合併症である.PTOおよび門脈血栓除去術は繰り返す人工肛門静脈瘤の一治療選択肢になり得ると考えられた.