日本門脈圧亢進症学会雑誌
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臨床研究
脾機能亢進症に対する腹腔鏡下脾臓摘出術の安全性と肝機能への影響に関する研究
岡野 圭一大島 稔須藤 広誠浅野 栄介岸野 貴賢藤原 理朗野村 貴子正木 勉鈴木 康之
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2017 年 23 巻 4 号 p. 262-267

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抄録

門脈圧亢進症では脾腫や脾機能亢進に伴う汎血球減少症を呈し,肝癌や食道静脈瘤などの併存疾患に対する治療制限に繋がることにより,致命的となることも稀ではない.当院ではこれまで門脈圧亢進症では脾腫・脾機能亢進に対する治療として(用手補助)腹腔鏡下脾臓摘出術を積極的に行っている.2008年から2013年までに施行した45例の腹腔鏡下脾臓摘出術における周術期の影響と血球・血小板数,肝機能などの短期・長期の変化を検討した.適応は1)血小板7万/μl以下,2)腹水がないかコントロール可能,3)脳症がない,4)肝細胞癌がコントロール可能かつ肝外転移がないものとした.45症例の肝障害度の内訳はChild-Pugh A:23例,B:20例,C:2例であり,原因疾患はC型肝炎34例,B型肝炎4例,その他7例であった.14例においては肝切除(7例),血行郭清(8例)などが同時施行された.手術時間は平均215分,出血量は平均184 mlであり,4例が開腹移行となった.術後合併症は門脈血栓8例,感染性合併症3例など計11例(24%)に認めたが,術後肝不全や手術関連死亡などはなかった.白血球数,血小板数は術前と比較して術後7日,1か月,1年目で有意(p<.001)に高値で維持された.術後1年目の評価では術前Child-Pugh B症例においてChild-Pugh scoreの改善が認められた.門脈圧亢進症に対する腹腔鏡下脾臓摘出術は安全で有用な治療手段であり,当科における手術適応は妥当であると判断された.また,Child-Pugh B症例においては肝機能の改善効果も得られた.

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© 2017 日本門脈圧亢進症学会
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