日本門脈圧亢進症学会雑誌
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23 巻, 4 号
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Editorial
総説
  • 米田 政志
    2017 年 23 巻 4 号 p. 245-248
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
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    非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は内臓脂肪に伴うメタボリックシンドロームの肝臓での表現型と考えられており,その中には線維化が進展して肝硬変や肝癌を発症する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が含まれているが,日本消化器病学会より刊行された「NAFLD/NASH診療ガイド2014」1)ではNAFLDのうちNASHでないものを非アルコール性脂肪肝(NAFL)と称している.NAFLDは内臓肥満に伴うインスリン抵抗性が主たる病因と考えられており,その治療の第一は食事・運動療法による減量療法である.薬物療法に関しては残念ながら十分なエビデンスのある治療法に乏しいが,メタボリックシンドロームとして背景にもつ基礎疾患に応じた薬物を使用するのが現状である.本稿では「NAFLD/NASH診療ガイドライン2014」1)をもとにNAFLD/NASHの治療に関して概説する.

原著
  • 石津 洋二, 石上 雅敏, 後藤 秀実
    2017 年 23 巻 4 号 p. 249-255
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    背景,方法:肝硬変患者の食道静脈瘤出血に対し予防的に抗菌薬を投与することが推奨されているが,本邦における投与の頻度や予後への影響に関する報告は少ない.そこで当院における144例の緊急EVL治療を対象とし,抗菌薬の予防投与が治療後の感染の発症と6週間以内の死亡に与える影響を後方視的に検討した.結果:抗菌薬の予防投与は16例(11.1%)のみであった.18例(12.5%)に感染が認められたが,予防投与群が2例,非投与群が16例であり,両群間に有意な差は認められなかった(p=0.627).6週間以内の死亡は39例(27.1%)に認められたが,予防投与群が4例,非投与群が35例であり,同様に有意な差は認めなかった(p=0.554).結語:抗菌薬の予防投与の頻度は低かったが,予後への影響は認めなかった.今後は前向きな検討を行い,本邦における適切な予防投与の適応を明らかにする必要がある.

  • 吉住 朋晴, 伊藤 心二, 播本 憲史, 原田 昇, 長尾 吉泰, 赤星 朋比古, 前原 喜彦
    2017 年 23 巻 4 号 p. 256-261
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    生体肝移植術中脾臓摘出術の効果と影響について検討した.初回成人間生体肝移植を施行した482例を脾臓摘出併施した302例(摘出群)と併施しなかった180例(非摘出群)に分けた.脾臓摘出群で術後14日目の総ビリルビン値は低値,腹水量は少量,プロトロンビン活性は高値であった.術後敗血症と急性拒絶反応の頻度は,脾臓摘出群で低かった.脾臓摘出に起因する術後膵液瘻を26例(5.4%),術後門脈血栓・脾門部断端からの出血を各々5例(1.0%),脾臓摘出後重症感染症を3例に認めた.6か月・10年グラフト生存率は脾臓摘出群では93.4%・73.7%,非摘出群では84.3%・64.9%と脾臓摘出群で有意に良好であった.多変量解析で脾臓摘出非施行とMELD値22以上が,生体肝移植後6か月以内グラフトロスの独立危険因子であった.生体肝移植術中脾臓摘出術により,生体肝移植後グラフト生存率が改善する可能性が示された.

臨床研究
  • 岡野 圭一, 大島 稔, 須藤 広誠, 浅野 栄介, 岸野 貴賢, 藤原 理朗, 野村 貴子, 正木 勉, 鈴木 康之
    2017 年 23 巻 4 号 p. 262-267
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    門脈圧亢進症では脾腫や脾機能亢進に伴う汎血球減少症を呈し,肝癌や食道静脈瘤などの併存疾患に対する治療制限に繋がることにより,致命的となることも稀ではない.当院ではこれまで門脈圧亢進症では脾腫・脾機能亢進に対する治療として(用手補助)腹腔鏡下脾臓摘出術を積極的に行っている.2008年から2013年までに施行した45例の腹腔鏡下脾臓摘出術における周術期の影響と血球・血小板数,肝機能などの短期・長期の変化を検討した.適応は1)血小板7万/μl以下,2)腹水がないかコントロール可能,3)脳症がない,4)肝細胞癌がコントロール可能かつ肝外転移がないものとした.45症例の肝障害度の内訳はChild-Pugh A:23例,B:20例,C:2例であり,原因疾患はC型肝炎34例,B型肝炎4例,その他7例であった.14例においては肝切除(7例),血行郭清(8例)などが同時施行された.手術時間は平均215分,出血量は平均184 mlであり,4例が開腹移行となった.術後合併症は門脈血栓8例,感染性合併症3例など計11例(24%)に認めたが,術後肝不全や手術関連死亡などはなかった.白血球数,血小板数は術前と比較して術後7日,1か月,1年目で有意(p<.001)に高値で維持された.術後1年目の評価では術前Child-Pugh B症例においてChild-Pugh scoreの改善が認められた.門脈圧亢進症に対する腹腔鏡下脾臓摘出術は安全で有用な治療手段であり,当科における手術適応は妥当であると判断された.また,Child-Pugh B症例においては肝機能の改善効果も得られた.

症例報告
  • 大山 淳史, 高木 章乃夫, 安中 哲也, 川野 誠司, 藤原 寛康, 八木 孝仁, 岡田 裕之
    2017 年 23 巻 4 号 p. 268-274
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    症例は40歳代,男性.Budd-Chiari症候群を合併した原発性胆汁性胆管炎として,当院外来通院中であった.腹水コントロールおよび食道静脈瘤治療目的に入院加療を繰り返していた.食道静脈瘤は周辺粘膜を含めて瘢痕化するも,狭細化した静脈瘤より出血を繰り返し,内視鏡治療に難渋するようになった.右肝静脈および中肝静脈が完全に閉塞し,左肝静脈も狭細化していることが,門脈圧亢進症に大きく影響していると判断され,画像上で唯一開存していた左肝静脈の拡張術を行った.術後に肝予備能と食道静脈瘤の著明な改善を認め,腹水も消失した.腹水の増悪および再発性食道静脈瘤破裂を繰り返していたものの,左肝静脈のみの拡張術後に門脈圧亢進が解除され,良好な経過をたどった病態であり報告する.

  • 矢田 晋作, 大内 泰文, 小谷 美香
    2017 年 23 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    plug-assisted retrograde transvenous obliteration(PARTO)は,AMPLATZER vascular plug II(AVP II)による排血路血流遮断下にゼラチンスポンジ(GS)を注入する逆行性静脈瘤塞栓術であり,2013年Gwonらによって報告された.今回,我々は拡張した胃腎シャントを伴う胃静脈瘤に対してPARTOを行った3例の初期経験を報告する.3例とも胃腎シャントにおけるバルーン閉塞下逆行性静脈造影上,胃静脈瘤の描出は認めなかった.全例で術後の造影CTでは,静脈瘤および供血路の一部に血流が残存したが,追加治療を行うことなく完全血栓化し退縮した.1例は増悪した食道静脈瘤に対する治療前に食道静脈瘤破裂によって死亡したが,それまで胃静脈瘤の再増大および出血は認めなかった.1例でGS注入中に供血路を介したGS細片の肝内門脈への逸脱を来したが,保存的に軽快した.1例で全身皮下血腫を生じ,巨大なシャントの血栓化による血小板減少の影響と考えられたが,保存的に軽快した.PARTOは簡便で有効な治療法と考えられた.

  • 丸野 美由希, 清末 一路, 松本 俊郎, 森 宣
    2017 年 23 巻 4 号 p. 281-285
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    症例は70歳女性.検診で慢性肝障害を指摘され,上部消化管内視鏡検査で食道および胃静脈瘤を認めた.食道静脈瘤に対する内視鏡加療後,胃静脈瘤の増大を認めたため,B-RTO目的に当科紹介となった.造影CTにて胃穹窿部に粘膜面に突出する静脈瘤を認めたが,胃腎短絡は同定できず,胃静脈瘤は左下横隔静脈から肋間静脈を介して,左内胸静脈へ流出していた.左内胸静脈からのアプローチでマイクロバルーンカテーテルを用いてB-RTOを施行し,静脈瘤の完全血栓化が得られた.胃腎短絡が同定できない胃静脈瘤でもCTでアプローチ可能な流出路が同定できれば,マイクロバルーンカテーテルの使用など手技の工夫をすることで,安全にB-RTOを施行可能な場合もある.

  • 高橋 悠, 四十万谷 卓也, 松本 泰司, 若松 隆宏, 松本 隆之, 田橋 賢也, 是枝 ちづ, 関 寿人, 岡崎 和一
    2017 年 23 巻 4 号 p. 286-292
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/11
    ジャーナル フリー

    症例は43歳,女性.アルコール性肝硬変による食道静脈瘤の経過観察のため上部内視鏡検査を施行された際に,胃体上部小彎に胃癌を認めた.胃癌治療のため,胃全摘出術,脾臓摘出術,Roux-Y再建を施行され,以後経過観察中であったが食道静脈瘤の増悪を認めたため,静脈瘤治療目的で紹介となった.今回,血管造影などを施行し,血行動態を把握した上で効果的に内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS)を施行した症例を経験したので報告する.

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