2020 年 26 巻 2 号 p. 167-172
症例は75歳男性.腹壁瘢痕ヘルニアに対するメッシュ修復術後門脈圧亢進症性胃症で吐血し腹壁哆開,感染を合併.その後創部出血を繰り返しメッシュ除去術を試みるも,癒着と出血で全摘出不可能であった.脾機能亢進に対し部分的脾動脈塞栓術(PSE)を施行.その後創部は瘻孔化したが出血を繰り返した.CTで創部静脈瘤と側副血行路発達を認め,浅腹壁静脈より逆行性経静脈的塞栓術を試みるも不可能で,α-cyanoacrylate monomer(CA)-Lipiodol瘻孔内注入やエコー下経皮的直接穿刺塞栓術を施行した.しかし再出血を繰り返し供血路の制御が必要であり経皮経肝静脈瘤塞栓術(PTO)を施行,供血腸間膜静脈分枝にCAを注入した.術後CTで供血静脈から腹壁静脈瘤へのCAの充填を確認した.難治性術後腹壁創部静脈瘤出血に対しPSE,エコー下経皮的直接穿刺塞栓術,PTOによる集学的治療が有効と思われた.