2023 年 29 巻 2 号 p. 127-133
【背景】肝星細胞(HSC)は,肝細胞(Hep)との共培養により「静止型」フェノタイプを維持する.我々は,HSCの「静止型」の維持には肝細胞膜との直接的な結合が必須であり,HSCを脱活性化させる肝細胞膜因子が存在するとの仮説を立てた.【方法】野生型マウス(m)からmHepを単離して細胞膜を精製した.この肝細胞膜をプレートにコーティングし,そのプレート上にマウスから単離したmHSCやヒト胎児肝星細胞(HHSteC)を培養してタイムラプスを用いた形態観察および遺伝子発現解析を行った.【結果】肝細胞膜上に培養したmHSCは,通常プレート培養に比べて「静止型」フェノタイプである樹状突起に富んだ形態を示し,活性化マーカーであるActa2,Col1a1発現が抑制された.HHSteCでも同様にACTA2,COL1A1発現は抑制され,静止型マーカーであるMMP1発現が上昇した.【結語】HSCの「静止型」フェノタイプの維持に関与する肝細胞膜因子の存在が示唆された.今後,本肝細胞膜因子の探索を行う予定である.