日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
Print ISSN : 1344-8447
ISSN-L : 1344-8447
29 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
Editorial
原著
  • 井上 喜来々, 河田 則文
    2023 年29 巻2 号 p. 127-133
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    【背景】肝星細胞(HSC)は,肝細胞(Hep)との共培養により「静止型」フェノタイプを維持する.我々は,HSCの「静止型」の維持には肝細胞膜との直接的な結合が必須であり,HSCを脱活性化させる肝細胞膜因子が存在するとの仮説を立てた.【方法】野生型マウス(m)からmHepを単離して細胞膜を精製した.この肝細胞膜をプレートにコーティングし,そのプレート上にマウスから単離したmHSCやヒト胎児肝星細胞(HHSteC)を培養してタイムラプスを用いた形態観察および遺伝子発現解析を行った.【結果】肝細胞膜上に培養したmHSCは,通常プレート培養に比べて「静止型」フェノタイプである樹状突起に富んだ形態を示し,活性化マーカーであるActa2,Col1a1発現が抑制された.HHSteCでも同様にACTA2,COL1A1発現は抑制され,静止型マーカーであるMMP1発現が上昇した.【結語】HSCの「静止型」フェノタイプの維持に関与する肝細胞膜因子の存在が示唆された.今後,本肝細胞膜因子の探索を行う予定である.

  • 瓦谷 英人, 増田 泰之, 芝本 彰彦, 高谷 広章, 𠮷治 仁志
    2023 年29 巻2 号 p. 134-138
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    近年,異所性静脈瘤が増加してきている.しかし,その治療方針は未だ確立されていない.今回当院での異所性静脈瘤破裂症例に対する治療成績について検討した.静脈瘤の発生部位は十二指腸が6例6病変,術後吻合部が5例9病変,直腸6例20病変,小腸(空腸)が2例2病変,上行結腸1例1病変,ストマが2例3病変の合計22例41病変であった.全例で一時止血を得た.一方,吻合部,直腸,ストマで高率に再出血を来していた.近年緊急出血にてシアノアクリレート系薬剤を用いた内視鏡的硬化療法(HA-EIS)が施行されているが,16例中十二指腸および上行結腸に施行した5例で供血路塞栓を得ており根治治療が可能であった.異所性静脈瘤破裂に対する1次止血効果は良好であり,内視鏡治療を第一選択としてよいと考える.また,排血路が単一である症例でHA-EISにより十分な供血路塞栓を行うことで根治治療となりうる可能性がある.

症例報告
  • 平尾 優典, 加賀谷 尚史
    2023 年29 巻2 号 p. 139-144
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    症例は60代男性.基礎疾患に精神発達遅滞,難聴,ろうあがあり,社会福祉施設入所中であった.X-20年施設嘱託医にてB型肝硬変と診断され,抗ウイルス薬が開始された.X-14年に,汎血球減少の原因検索のため血液内科を受診し,骨髄異形成症候群(MDS)と診断された.X-11年にブレイクスルー肝炎を来し内服薬を変更し,以後肝逸脱酵素の上昇や,B型肝炎ウイルス量の増加は認めていなかった.X-1年1月,意識障害で救急搬送された.採血上アンモニア上昇を認めた.頭部CTで明らかな異常を認めなかった.腹部CTでは,巨脾に加え左胃静脈を介して下大静脈に流出する側副路が高度に発達し,脳症の原因と考え,門脈体循環性脳症と診断した.社会的背景から,組織学的な所見は得られていないが,B型肝硬変を背景として,MDSによって肝内および脾内髄外造血が亢進したことにより,高度の側副血行路形成を呈した可能性が示唆された.

  • 杉村 真之介, 加藤 慶三
    2023 年29 巻2 号 p. 145-151
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    症例1は58歳男性.非アルコール性脂肪肝炎による肝硬変と診断され,2年前に食道胃静脈瘤(EGV)の治療目的で当院に紹介された.食道静脈瘤(EV)に対して内視鏡的硬化療法(EIS),胃静脈瘤(GV)に対してバルーン下逆行性経静脈的塞栓術を施行した.6か月前にEVの再発を認め,2日前より黒色便が出現,EV破裂と考え内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を行った.2日後から発熱し,造影CTにて肝膿瘍を認めた.スルバシリンの点滴静注後レボフロキサシンの内服にて軽快した.症例2は63歳男性.1日前からの黒色便にて当院を受診した.アルコール性肝硬変によるEV破裂と診断し,EVLで止血した.術後より発熱し,スルバシリンの点滴静注を開始した.造影CTにて肝膿瘍を認め,メロペネムに変更後レボフロキサシンの内服にて軽快した.消化管静脈瘤破裂やその内視鏡治療では低くない感染リスクから,臨床症状に応じて膿瘍形成を考慮した画像検査を行い,早期に治療介入することが重要である.

feedback
Top