2023 年 29 巻 2 号 p. 139-144
症例は60代男性.基礎疾患に精神発達遅滞,難聴,ろうあがあり,社会福祉施設入所中であった.X-20年施設嘱託医にてB型肝硬変と診断され,抗ウイルス薬が開始された.X-14年に,汎血球減少の原因検索のため血液内科を受診し,骨髄異形成症候群(MDS)と診断された.X-11年にブレイクスルー肝炎を来し内服薬を変更し,以後肝逸脱酵素の上昇や,B型肝炎ウイルス量の増加は認めていなかった.X-1年1月,意識障害で救急搬送された.採血上アンモニア上昇を認めた.頭部CTで明らかな異常を認めなかった.腹部CTでは,巨脾に加え左胃静脈を介して下大静脈に流出する側副路が高度に発達し,脳症の原因と考え,門脈体循環性脳症と診断した.社会的背景から,組織学的な所見は得られていないが,B型肝硬変を背景として,MDSによって肝内および脾内髄外造血が亢進したことにより,高度の側副血行路形成を呈した可能性が示唆された.