2025 年 31 巻 2 号 p. 160-166
症例は39歳女性.膵頭部癌に対しSSPPDおよび門脈合併切除を施行.術後1年で高度の貧血と黒色便を認め当科へ紹介入院.腹部CTで門脈本幹の高度狭窄と胆管空腸吻合部を中心に多数の側副血行路を認めた.F2RC1食道静脈瘤へのEVL施行後も貧血が改善せず,SBEで吻合部胆管内腔に全周性に海綿状血管増生を認めたため,胆管空腸吻合部静脈瘤出血と診断しIVR治療を選択した.PTPで門脈本幹の高度狭窄と吻合部静脈瘤を介したSMVからの求肝性側副路の発達を確認した.門脈本幹の求肝性血流を改善するため狭窄長測定後に門脈ステントを挿入した.その後のSMVからの造影では吻合部静脈瘤の描出が残存していたため,さらに静脈瘤供血路の挙上空腸静脈を金属コイルで塞栓した.塞栓後の造影で門脈本幹血流の改善と吻合部静脈瘤の消失を確認し治療を終了した.術後は順調に経過し退院となり,現在も貧血を認めず外来通院中である.