2025 年 31 巻 4 号 p. 245-254
脾内に瀰漫性動静脈短絡(AV shunt)が発現した門脈圧亢進症において,上腸間膜静脈(SMV)の末梢分枝に超音波ドプラ法(US)で動脈性拍動波が認められるとともに,dynamic CTの早期動脈相においてSMV末梢枝の一部に早期造影が局所的に認められ,SMV末梢域における小さなAV shuntの存在が疑われた3症例を経験した.この小さなAV shuntは門脈圧亢進症による変化を否定できないが,原因不明の肝障害を背景にした脾内AV shunt発現例であり,この門脈圧亢進症には負のスパイラルといえる血流動態的な肝脾相関の存在が推察された.このスパイラルは肝障害による肝動脈の末梢血管抵抗の上昇や脾内でのAV shuntの発現等の他にSMV領域のAV shuntによっても惹起されることが推察される.原因不明の肝障害が疑われる症例にはUSを含めた各種画像診断法によるSMV領域の小さなAV shunt検索も重要と考えられた.