2025 年 31 巻 4 号 p. 255-258
患者は10歳代男性.小児期にデスモイド腫瘍摘出術と浸潤を伴う上腸間膜静脈の合併切除を施行した.術後再発なく経過するも,13年後に多量の黒色便で受診,精査の結果,上腸間膜静脈の閉塞に伴い回腸静脈が拡張,十二指腸と結腸肝弯曲部の静脈瘤を認め,十二指腸静脈瘤出血と診断した.保存的に止血を得られ,待機的手術とした.術中上腸間膜静脈は癒着のため剥離困難,門脈本幹と回腸静脈間は15 cm離れていたため,浅大腿静脈グラフトを使用し吻合した.吻合後に回腸静脈圧は低下,十二指腸静脈瘤は消失した.本症例は若年で全身状態も良好であり,異所性静脈瘤に対して外科的な門脈系の血行再建術を選択し良好な結果を得られた.異所性静脈瘤の確立した治療法はなく,症例に応じて内視鏡やカテーテル治療が選択されることが多いが,患者の状態や各治療法の特徴を踏まえた上で,外科手術を選択することも念頭に入れて治療を行っていくことが重要である.