抄録
硬化療法の遠隔期での合併症および長期成績について検討したので報告する.対象は1982年1月より1996年5月までに当院で硬化療法を施行された1,600例のうち, 3年以上経過した症例555例である.内訳は, 肝硬変症が529例で, 急性例91例, 待期例128例, 予防例336例, 肝癌合併73例であった.平均4.4回の硬化療法を受け, 静脈瘤の完全消失率は91.9%であった.おもな合併症としては, 食道狭窄91例が治療直後に認められた.上部消化管出血は57例に認められ, 30例は治療途中か硬化療法後の潰瘍出血であった.治療後の門脈血栓は0例, 食道癌の発生5例, 肝癌の発生53例であった.10累積非出血率は91.3%, 10年累積小血管出現率は39.4%であった.死因は, 肝不全112例 (52.6%), 肝癌69例 (32.4%), 上部消化管出血6例 (2.8%) であった.以上より, 硬化療法は, 長期に静脈瘤出血を予防することが可能であり, 硬化療法に起因する重篤な合併症はなく, 良好なQOLが得られることが分かった.