抄録
教室では, 食道胃静脈瘤に対して, ICG血中消失率や凝固能を指標とした適応基準により胃上部切除術を主とした直達手術を行ってきた.1973年以降の術入院死や肝癌発症例を除いた肝硬変患者119例の長期生存率は良好な成績であったが, これらの症例は, Child-Pughによる分野では, すべてA群とB群のみであった.直達手術後の長期成績の検討では, 再発と再出血が問題となってくる.従来の成績では, 5年再発率出血率は, それぞれ18%, 17%であった.しかし, 内視鏡療法の進歩普及した近年では, 44%, 11%であった.内視鏡療法により, 再発に対する早期よりの対処が可能となり, 術後のQOLは著しく改善している.直達手術の位置付けは変化してきているが, 肝機能軽度障害例, 胃静脈瘤症例, 脾機能亢進症例など病態に応じた適切な選択による直達手術は, 良好な長期成績を得る治療法として有用である.