日本門脈圧亢進症食道静脈瘤学会雑誌
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血管造影所見よりみた門脈圧亢進症の血行動態
中西 亮大橋 薫児島 邦明深沢 正樹別府 倫兄二川 俊二
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1998 年 4 巻 3 号 p. 303-308

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抄録
腹部血管造影より肝硬変合併食道静脈瘤症例の成因および食道静脈瘤の増大因子を検討した.左胃静脈の血流方向に注目し症例を遠肝性血流群, 求肝性血流群, 両方向血流群, 血流不明群に分類したところ, 肝機能障害高度になるにつれ, 左胃静脈血流は求肝性から遠肝性あるいは両方向性に変化していくと考えられた.また食道静脈瘤の程度と左胃動脈, 左胃静脈所見の比較検討より, 食道静脈瘤の増大因子としては左胃動脈血流より左胃静脈を逆流する血流の影響が大きいと考えられた.経胸食道離断術の効果をみると, 遠肝性血流群症例に術後の食道静脈瘤の遺残がみられた.また術後の血管造影所見より傍食道静脈や胃腎短絡路の温存が遺残・再発予防に有効と考えられた.食道静脈瘤の治療を考える場合は治療前の左胃静脈の血流方向に注目し治療効果を予測し, 治療方法を検討することが重要と考えられた.
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