抄録
“群盲象を評す” という有名な諺がある.これには2つの意味が含まれている.1つは象という動物を目の見えない人たちが触って自分が触った “部分” を象の “全体” だと勘違いしてしまう, 一種の愚かしいことのたとえ話である.もう1つは, 象という巨大な物は一人では理解しきれないので, 多数の人が部分部分の情報を持ち寄って統合することで初めて全体が明らかになる, ということのたとえ話である.我々が科学で未知の問題に当たったとき心しておかなければならないことである, と同時に象の検討に馬だか牛だかわけのわからない情報が紛れ込むこともあるし, 更に象にはアフリカ象もあればインド象もあり詳細な検討ではこのことも注意が必要かもしれない.ということで “群盲象を評す” もよく考えると奥の深い寓話である