抄録
末期肝硬変症例において利尿剤に対して不応性もしくは不耐性を示す難治性腹水は患者のQOLを著しく損なう重篤な合併症であるがその発生機序は未だ明らかではない.今回我々は腹水の難治化に腹膜組織における血管透過性の変化や腹膜リンパ組織の腹水吸収機能が関与する可能性を推測し, 強力な血管透過性充進作用を有するVEGF-Aおよびリンパ管の構築に関与するVEGF-CおよびVEGF-Dの腹水中の濃度を測定し, 腹水の難治性との関連について検討した.その結果難治性腹水中のVEGF-Aは非難治例に比し有意に高値を示した.腹水VEGF-Cは腹水難治化の指標の一つである尿中ナトリウム排泄量と有意な川頁相関を示した.以上より肝硬変患者の腹水VEGF-AおよびVEGF-Cは腹水難治化に関連する局所因子であり, 腹水難治化を予測する新たな指標となる可能性が示唆された.