抄録
症例は71歳の男性.アルコール性肝硬変のために近医通院中であった.平成18年3月, 吐血をきたし近医に救急搬送され, その後当院へ転院となった.入院時の上部消化管内視鏡検査では食道胃接合部から少量の出血を認め, Aethoxysklerolにて止血を行った.その後, 待期的に内視鏡的静脈瘤硬化療法の追加を行った翌日, 食事を開始した後から胸背部痛が出現, 新鮮血の吐血も認められた.緊急内視鏡検査を施行したところ, 上部から下部食道にかけて食道内腔を占拠する巨大血腫を認めた.出血量は比較的多く肝機能の低下も認められたが, 2週間後には食道に1/2周性の潰瘍を認めるものの血腫はほぼ消失し, 肝機能も改善傾向を示した.硬化療法後の巨大血腫は比較的予後良好とされているが, 肝機能不良例においては厳重な注意を要すると考えられた.