抄録
症例は60歳代, 女性.自己免疫性肝炎で他院にて経過観察中吐血胃静脈瘤からの出血と診断した.CT上, 胃腎短絡を認め, 初回のB-RTO施行.腹腔動脈造影で主な供血路は左胃静脈と短胃静脈で胃静脈瘤および胃腎短絡, 傍食道静脈が描出された.B-RTVで胃腎短絡から左胃静脈を介し傍食道静脈への流出が見られたが, 胃静脈瘤本体の描出がなかった.B-RTV下CTでも胃静脈瘤本体は造影されなかった.胃静脈瘤近位までマイクロカテーテルを挿入できなかったため, 硬化剤の注入は危険と判断し中止.経過観察一カ月後, 再出血, NBCAで止血し, 数日後, 再度, B-RTOを施行した.経皮経肝的に門脈から左胃静脈の傍食道静脈への排血路を越えて胃腎短絡側にバルーンカテーテルを進めた.さらに, 胃腎短絡にバルーンを挿入, 両方同時バルーン閉塞下でのB-RTVを施行すると, 胃静脈瘤および短胃静脈が描出されたため, この状態でB-RTOを施行した.数日後, CTで胃静脈瘤の血栓化を確認その後, 胃静脈瘤は消退した.左胃静脈を介して傍食道静脈が副排血路となっている例に対し, 経皮経肝的な門脈アプローチでこの副排血路を遮断し, B-RTOを行った1例を報告した.