抄録
門脈大循環短絡路が原因で肝性脳症を繰り返すportal-systemic encephalopathyの1例に対して短絡路温存門脈-大循環分流術を施行した.上腸間膜動脈性門脈造影では脾静脈血流は遠肝性であり, 脾腎短絡路を介して下大静脈へ流入するのを確認した.そこで経皮経肝的アプローチで短絡路よりも肝側の脾静脈を金属コイルを用いて塞栓した.塞栓術後の上腸間膜静脈造影では門脈血流は増加したが, 門脈圧測定では術前160mmH2Oから術後190mmH2Oと若干の上昇に留まり, 術後の血中アンモニア値は著明に低下した.術後約25カ月が経過したが, 脳症の再発は認めておらず, 腹水, 静脈瘤の増悪なく, 肝予備能にも影響を及ぼしていない.今後長期の経過観察が必要と思われるが, 本疾患に対し同術は有用であると思われた.