日本門脈圧亢進症学会雑誌
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6 巻, 1 号
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  • 岡本 喜一郎, 蓮見 昭武, 藤田 順子, 杉岡 篤, 小森 義之, 宇山 一朗, 松井 英男, 曽我 良平, 若山 敦司, 大山 晃弘
    2000 年6 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    肝硬変症性門脈圧亢進症における門脈圧亢進症性胃症 (PHG) の発症機序について, 胃粘膜の病理組織学的所見, 組織血流量, 組織ヘキソサミン量の面から臨床的に検討した.その結果, 肝硬変症性門脈圧亢進症例の胃体上部粘膜層では, 組織学的に鯵血, 粘膜内血管拡張, 間質浮腫など微小循環異常に直接関連する変化, ならびに組織血流量の減少, 組織ヘキソサミン量の低下などの病態を示し, かつこれらの変化程度とPHGの有無・程度との間に関連を認めた.したがってPHGの発症機序として, 門脈圧亢進に伴う胃壁の二次的な欝血だけでなく, 下部食道胃噴門部領域の循環亢進状態に伴って生ずる粘膜の虚血および欝血の病態, および粘液糖蛋白質合成の低下による粘膜防御機構破綻の病態なども関与している可能性が推察された.
  • -20MHz細径プローブによる検討-
    矢崎 康幸, 首藤 龍人, 上西 博, 桜井 忍, 吉田 美佳, 吉田 行範
    2000 年6 巻1 号 p. 7-11
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    われわれはRC-sign (+) までの食道静脈瘤ではEVLを併用した治療法でも比較的良好な治療成績が得られるが, RC-sign (++) 以上の例では高率に早期再発を来すことを報告してきた.今回, 超音波内視鏡 (EUS) の視点から食道静脈瘤の待期・予防的治療例に対するEVLの適応について検討した.緊急例を除く未治療食道静脈瘤40例に脱気水注入法によるEUSを施行した.食道周囲血管系 (噴門静脈叢, periesophageal plexus, paraesophageal plexus, 貫通血管) が中等度以上に発達していた28例はEIS従来法単独で, 軽度であった12例はEVLで可及的に結紮後少量の5%ethanolamineole ateを使用したEISを付加する簡便法で治療した.これら2群の3年累積非再発率はEIS単独群94.9%, EVL併用の簡便法群100%であった.EUSで治療法の選択を行ったところ, 従来早期再発が問題視されてきたEVL簡便法でもEIS単独群に匹敵する良好な長期予後が得られた.
  • 北本 幹也, 高橋 祥一, 相方 浩, 鎌田 耕治, 川上 由育, 松本 明子, 大石 和佳, 中西 敏夫, 市川 徹, 横山 隆, 弓削 ...
    2000 年6 巻1 号 p. 12-15
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    小児食道静脈瘤患者 (胆道閉鎖症術後5例, 肝前性門脈閉塞症2例) の出血例7例に対し, 5%ethanolamine oleate with iopamidolを用いた内視鏡的静脈瘤硬化療法 (EIS) を待期的に施行し, 全例で止血が得られた.初回EIS後食道静脈瘤出血を4例に認め (EIS後6-61カ月, 平均22.5カ月), 再度EISを施行し止血し得た.食道潰瘍を1例に認めたものの保存的加療にて軽快し, そのほかに重篤な合併症は認めなかった.出血の度にEISを反復している現状であるが, 出血が死因となった症例は認めていない.EISは小児食道静脈瘤に対しても成人例同様, 安全で効果的と考えられた.
  • 蘆田 寛, 西脇 学, 住本 洋之, 山村 武平, 西岡 昭彦, 坂上 庸一郎, 楠 徳郎
    2000 年6 巻1 号 p. 16-20
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    遠位脾腎静脈吻合術 (DSRS) の手術適応を, 術後3年以上生存症例より検討した.DSRS189例のうち改良術式のSPDを併設した99例で, 術後3年以上生存した70例を対象とした.術前EIS施行例は44例 (62.9%) で, うち10例はEIS治療抵抗例といえた.術後静脈瘤出血は64例 (91.4%) で術後長期間防止できた.6例の静脈瘤出血例は, シャント閉塞による食道静脈瘤再発が3例, 側副血行路新生に起因した胃静脈瘤出血が3例であり, 拡大胃血管郭清22例の1例も含まれた.それ以外に, シャント閉塞を認めないも術後食道静脈瘤悪化を2例に認めた.術後静脈瘤再治療の不必要性からはDSRS+SPDは優れており, EIS治療抵抗例は良い適応といえる.ただ, その適応は耐術を考慮すればChild AとBの-部の肝機能良好例といえた.
  • 真々田 裕宏, 恩田 昌彦, 田尻 孝, 秋丸 琥甫, 梅原 松臣, 吉田 寛, 谷合 信彦, 金子 昌裕, 吉岡 正人, 峯田 章, 平方 ...
    2000 年6 巻1 号 p. 21-25
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    肝癌合併肝硬変症例における難治性腹水に対し, 腹腔一鎖骨下静脈シャント術 (Denverシャント) を施行し, その臨床経過について検討した.対象は, 1998年1月以降Denverシャントを施行した肝癌合併肝硬変症例8例.男性7例, 女性1例, 平均年齢63.4歳 (53歳-81歳).局所麻酔下に腹腔-皮下トンネル-右鎖骨下静脈ルートでシャント術を施行した.術後全例に腹部膨満感の消失, 腹囲の減少, 尿量の増加, 腎機能の改善を認めた.また重篤な凝固障害は認められなかった.予後をみると7例が死亡し, 平均生存期間は4.1カ月で, 現在まで最長14カ月の生存が得られている.Denverシャントは予後を左右することはないが, 侵襲が比較的少なく, 腹水のコントロールに難渋する肝癌合併肝硬変症例に対してQOLの向上に有用であった.
  • 鈴木 穣, 岩崎 隆雄, 田辺 暢一, 福島 耕治, 山川 暢, 山極 洋子, 西岡 可奈, 下瀬川 徹, 豊田 隆謙
    2000 年6 巻1 号 p. 26-31
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    B-RTOは胃静脈瘤のみならず肝性脳症に対しても有用な治療法であるが, 胃腎シャントが存在しなかったり, 排血路の走行が非定型的な場合には施行が困難となる.症例1は胃腎シャントが存在せず, 排血路が複数存在していたが, computed tomography during arterial portography (CTAP) を丹念に読影することによって1本の共通の排血路の存在が判明し, そこまでバルーンカテーテルを挿入しB-RTOを施行した.症例2はCTAPにて, 脾腎シャントの排血路が複数の太い枝に分かれていることが判明した.B-RTO用シース等を用いガイドワイヤーを門脈右枝まで挿入し, B-RTOを施行した.症例3はCTAPにて脾腎シャント出口が細い何本かの血管によって構成されていることが判明し, 巨大バルーンとマイクロカテーテルの使用にてB-RTOが施行できた.いずれも術前にCTAPを施行することによって, シャント血管を三次元的に把握することが可能であり, B-RTOの術前評価に右用であった.
  • 西岡 可奈, 岩崎 隆雄, 蒲 比呂子, 田辺 暢一, 福島 耕治, 山川 暢, 山極 洋子, 鈴木 穰, 下瀬川 徹, 豊田 隆謙
    2000 年6 巻1 号 p. 32-37
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.食道静脈瘤治療のため紹介となった.67歳時を初発として, 度重なる食道静脈瘤破裂の既往をもつ.日本酒3合×40年間.貧血なし.肝障害は軽度, USG, dynamic CT, dynamic MRI, 血管造影, CTAP, 炭酸ガス動注下USGにてS4に径35mmの類円形の結節性病変を認め, この結節は動脈からの血液供給はほとんどなく, 門脈から栄養されていた.これ以外にも主として肝門部を中心に径1-4cmの同様の血行動態を示す結節性病変を多数認めた.明らかな脾腫は認めなかった.腹腔鏡では肝硬変を認めず, 結節の生検では腫瘍性変化を疑う所見はみられなかった.非硬変性の門脈圧亢進症に合併する再生性ないしは過形成性の結節性病変の病態を考えるうえで貴重な症例と考えられた.
  • 松井 繁長, 井上 良一, 上硲 俊法, 工藤 正俊
    2000 年6 巻1 号 p. 38-42
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 男性.1983年より真性多血症にて近医を通院加療していた.1998年8月に吐血を来し, 食道静脈瘤破裂と診断され当院紹介となった.入院後, 血管造影, MR angiographyでは門脈血栓や肝外門脈血栓を認めなかった.食道静脈瘤はLsF3CbR (C3+) を認めEVLを施行しF0となった.しかし, その後腹水大量となり, また4カ月後にはF2の静脈瘤再発を認めたためにTIPSを施行した.TIPS後, 腹水は完全消失し静脈瘤もF0へと改善した.肝性脳症等の合併症は認めなかった.本症例における門脈圧亢進症の原因として脾における髄外造血により門脈血流量が増大, 肝での髄外造血巣による血行障害が関与していると考えられ, TIPSを施行したことにより改善したと考えられた.
  • 鎌田 耕治, 北本 幹也, 相方 浩, 川上 由育, 松本 明子, 大石 和佳, 今村 道雄, 河野 博孝, 中西 敏夫, 梶山 梧朗
    2000 年6 巻1 号 p. 43-45
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    門脈大循環短絡路が原因で肝性脳症を繰り返すportal-systemic encephalopathyの1例に対して短絡路温存門脈-大循環分流術を施行した.上腸間膜動脈性門脈造影では脾静脈血流は遠肝性であり, 脾腎短絡路を介して下大静脈へ流入するのを確認した.そこで経皮経肝的アプローチで短絡路よりも肝側の脾静脈を金属コイルを用いて塞栓した.塞栓術後の上腸間膜静脈造影では門脈血流は増加したが, 門脈圧測定では術前160mmH2Oから術後190mmH2Oと若干の上昇に留まり, 術後の血中アンモニア値は著明に低下した.術後約25カ月が経過したが, 脳症の再発は認めておらず, 腹水, 静脈瘤の増悪なく, 肝予備能にも影響を及ぼしていない.今後長期の経過観察が必要と思われるが, 本疾患に対し同術は有用であると思われた.
  • 住本 洋之, 西脇 学, 藍田 寛, 山村 武平
    2000 年6 巻1 号 p. 46-50
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は33歳女性, 肝外門脈閉塞症 (EHO) による食道胃静脈瘤に対し18歳時経腹的食道離断・脾摘・近位脾腎静脈吻合施行.20歳時胃静脈瘤再発に対して噴門側胃切除施行.その後も出血を認め内視鏡的硬化療法 (EIS) を繰り返し, 25歳時上腸間膜静脈下大静脈H吻合施行.27歳時右葉focal nodularhyperplasiaに対しS7亜区域切除施行.33歳時に胃食道静脈瘤による吐下血を繰り返しEIS施行するも効果なく出血死した.17年間にわたり外科的治療やEISを繰り返すも出血がコントロールできず治療に難渋し長期間の血行動態を観察し得たEHOの1例を経験したので報告した.
  • 中島 敏郎, 鹿毛 政義
    2000 年6 巻1 号 p. 51-54
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    発症後13年目に呼吸困難増強し, 胃静脈瘤の破綻による吐血, 下血を繰り返し, 死の転機を取った46歳女性の原発性肺高血圧症に肝硬変を併存した症例で, 剖検により, 肝臓の門脈域, 肝静脈域のいずれにも肝内異常血行路cavernous transformationが観察され, 肝内門脈, 肝静脈における高度の循環障害が示唆されたきわめて稀な症例である.剖検時, 肝動脈, 肝内門脈枝に造影剤を注入し, X線像, ならびに組織像で, 一般的肝硬変 (肝炎性肝硬変) と異なった血管構築を示しているため, 非定型肝硬変と診断したが, 原発性肺高血圧症との相互関係を関連文献を参考にして検討した.
  • 安保 義恭, 近藤 哲, 金谷 聡一郎, 近江 亮, 平野 聡, 奥芝 俊一, 加藤 紘之
    2000 年6 巻1 号 p. 55-57
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    孤立性胃静脈瘤に対してシャント手術 (DSRS法) を行った.内視鏡的ドプラ血流計 (EMDS) で孤立性胃静脈瘤の血行動態上の特徴を検索するとともに, 手術前後の変化からシャント術の意義を評価した.孤立性胃静脈瘤7例の術前のEMDSでは, 血流は胃宵窪部から胃体部に向かう方向で, 平均最大血流速度は30.0cm/sであった.これは食道胃静脈瘤 (n=8) の最大速度17.0cm/sより有意に速かった.孤立性胃静脈瘤4例のシャント手術前後の血行動態の変化は血流方向は新たな脾腎シャントへ向かう方向で, 流速は術前最大27cm/sから術後6cm/sへ低下した.内視鏡上も静脈瘤は縮小し, 術後の再発例も認めず治療効果が高かった.DSRS法は胃周囲血行郭清による静脈瘤への供血路遮断と新たな脾腎シャントによる胃上部領域の選択的減圧が可能で, 有効肝血流を維持しつつ再出血が制御できる特徴があり孤立性胃静脈瘤の有用な治療法のひとつと考えられた.
  • 卜部 健, 小林 健一
    2000 年6 巻1 号 p. 58-60
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
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