抄録
孤立性胃静脈瘤に対してシャント手術 (DSRS法) を行った.内視鏡的ドプラ血流計 (EMDS) で孤立性胃静脈瘤の血行動態上の特徴を検索するとともに, 手術前後の変化からシャント術の意義を評価した.孤立性胃静脈瘤7例の術前のEMDSでは, 血流は胃宵窪部から胃体部に向かう方向で, 平均最大血流速度は30.0cm/sであった.これは食道胃静脈瘤 (n=8) の最大速度17.0cm/sより有意に速かった.孤立性胃静脈瘤4例のシャント手術前後の血行動態の変化は血流方向は新たな脾腎シャントへ向かう方向で, 流速は術前最大27cm/sから術後6cm/sへ低下した.内視鏡上も静脈瘤は縮小し, 術後の再発例も認めず治療効果が高かった.DSRS法は胃周囲血行郭清による静脈瘤への供血路遮断と新たな脾腎シャントによる胃上部領域の選択的減圧が可能で, 有効肝血流を維持しつつ再出血が制御できる特徴があり孤立性胃静脈瘤の有用な治療法のひとつと考えられた.