日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
Print ISSN : 1344-8447
ISSN-L : 1344-8447
十二指腸静脈瘤出血に薬物療法が奏効した肝外門脈閉塞症の1例
馬場 俊之石川 晶久竹内 義明柴田 実西田 均三田村 圭二
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 6 巻 3 号 p. 152-156

詳細
抄録

症例は27歳, 男性.新生児期に膀静脈炎の既往があり, 7歳時に肝外門脈閉塞症による食道静脈瘤破裂と診断され, 直達手術を受けている.24歳より消化管出血を繰り返し, 1997年5月より十二指腸静脈瘤破裂と診断され入退院を繰り返していたが, 同年12月, 十二指腸静脈瘤の再破裂にて当科に入院となった.血液検査所見では貧血を認めたが, 肝機能検査は正常であった.上部消化管内視鏡検査では十二指腸下行脚に赤色栓を伴う静脈瘤を認め, 内視鏡的静脈瘤結紮術により縮小した.各種画像検査では門脈本幹から門脈に流入する腹腔内静脈は広範に閉塞し, 海綿状血管増生を認めた.十二指腸静脈瘤の再破裂の予防のため, 側副血行路としての十二指腸静脈瘤の温存, 術中出血などの手術侵襲などを考慮し, 追加治療として薬物療法を選択した.β遮断薬と硝酸薬の併用により, 十二指腸静脈瘤破裂の頻度は低下した.一時, 解熱鎮痛剤の服用や, β遮断薬と硝酸薬の自己中止により再破裂が認められたが, その後, 定期的な服用により再破裂は認められていない.薬物療法は, 治療困難な静脈瘤には考慮すべきである.

著者関連情報
© 日本門脈圧亢進症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top