1996年7月より1999年8月までに当科において食道胃静脈瘤に対して手術療法を施行した症例について検討した.基礎疾患は肝硬変症3例, 特発性門脈圧亢進症2例で肝癌合併例は1例であった.術前の肝機能はchild分類でAが3例, cが2例, 治療適応は緊急1例, 待期3例, 予防1例であった.これらの症例は, (1) 食道静脈瘤に対してEIS抵抗性, および短期間での増悪, (2) 脾機能亢進症を伴った巨脾, および側副血行路の発達, (3) B-RTOあるいはTJO不能といった要因をいくつか兼ね備えており, 保存的治療に抵抗性であることが予想されたため長期予後, QOLを考慮し手術が妥当と判断した.手術は2例に経腹的食道離断術を, 3例にHassab手術を施行した.観察期間は484.8±433.9日 (63-1133日), 3年累積再発率は0%, 3年累積非出血率は100%であった.術後全症例で静脈瘤の消失が得られた.術前後の肝機能では血小板数, PT活性値, ヘパプラスチンテスト, ICG15分停滞率がいずれも有意に改善していた.術後116日目に肝癌死した1例を除いた4例が生存中で, 現在まで外来にて経過観察しているがいずれの症例も静脈瘤の再発を認めていない.保存的治療に抵抗性の食道胃静脈瘤は, 早期より手術療法の併用を考慮すべきであると考えられた.
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