2018 年 55 巻 1 号 p. 15-18
抗がん剤以外の薬剤による汎血球減少症はまれな有害事象であり,造血器疾患や化学療法中の患者に合併した場合は鑑別を難しくする.われわれは,急性リンパ性白血病に薬剤性汎血球減少症が併発し,寛解の判定に難渋した症例を経験した.症例はNoonan症候群を基礎疾患に持つ2歳の女児である.B前駆細胞性急性リンパ性白血病に対する寛解導入療法の経過中に肥大型心筋症と診断され,プロプラノロールの内服が開始された.寛解導入療法の終了時に回復の傾向がみられた血球数が再度減少に転じ,骨髄検査では芽球はないものの低形成であった.プロプラノロールによる薬剤性汎血球減少症を考慮し同薬を中止したところ,血球は速やかに回復し骨髄像は正形成となり寛解を確認できた.化学療法中に造血抑制が遷延する場合,併用薬物による汎血球減少症を鑑別に挙げ,原因薬物の早期除去を考慮することは重要である.