日本小児血液・がん学会雑誌
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55 巻, 1 号
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会告
第58回日本小児血液・がん学会学術集会記録
シンポジウム7: 2学会合同シンポジウム「笑顔のたね」
  • 髙橋 真理子
    2018 年 55 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル フリー

    長期入院を強いられている子どもたちや,夜に外にでる機会がほとんどない難病の方たちやその家族に,星空と宇宙を届ける「病院がプラネタリウム」という活動を始めて4年がたった.2018年3月現在,これまでの訪問先は77カ所,訪問回数は135回,体験していただいた方の数は7000名以上にのぼる.子どもたちや難病の方々の表情が大きく変わったり,笑顔がみられたり,元気になったりする姿に多々出会ってきた.星空は,「私たちはみな宇宙内存在であるからこそちっぽけで愛おしい存在」であることを教え,それは一人ひとりが生きていくための肯定感や希望につながるものであると感じている1)

    本稿では,「病院がプラネタリウム」の活動内容を報告するとともに,ベースに考えているリスクマネジメント,さらには,今後の展望について述べる.

原著
  • 入江 亘, 長谷川 大輔, 神谷 尚宏, 永瀬 恭子, 吉川 久美子, 関冨 晶子, 天野 こころ, 石井 里奈, 芹澤 裕子, 坂本 代喜 ...
    2018 年 55 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル フリー

    小児がんの子どもは治療のため長期の入院を要するが,入院生活の実態を家族側から検討した研究はほとんどない.そこで,入院生活の実態とそれに対する家族の考えを明らかにするため,家族への横断的質問紙調査を行った.2004年4月から2009年10月の間に当院に入院したことがある43名の小児がんの子どもの家族から回答を得た.22家族(51%)は入院中のテレビ視聴が制限されていると感じていたが,入院前のテレビ視聴時間や子どもの年齢はその感じ方に影響を与えていなかった.テレビ視聴が制限されていると感じる家族は,子どもが気分転換できずにストレスがたまっていると回答していた.携帯電話の所有率は同世代の平均よりも高く,所有していた子どもの半数以上は,入院を契機に購入していた.病院食については,入院中に食事の持ち込みが禁止されていて「困って」いたと回答していた家族の78%が「子どもが病院食を全く食べない」と捉え,持ち込み食を希望する回答が寄せられた.また,家族の63%は子どもの食事の嗜好に変化が生じたと感じており,塩味や濃い味を好む傾向があった.本調査から,病棟規則でメディアや持ち込み食を一律に禁止するよりも上手に利用するメリットがある可能性が示唆された.モバイル機器の進化などにより生活スタイルが日々変化することを考慮し,時代に即した柔軟な対応が小児がんの子どもの入院生活の質向上につながる可能性がある.

症例報告
  • 野沢 永貴, 加藤 元博, 大隅 朋生, 谷口 真紀, 石黒 精, 富澤 大輔, 松本 公一
    2018 年 55 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル フリー

    抗がん剤以外の薬剤による汎血球減少症はまれな有害事象であり,造血器疾患や化学療法中の患者に合併した場合は鑑別を難しくする.われわれは,急性リンパ性白血病に薬剤性汎血球減少症が併発し,寛解の判定に難渋した症例を経験した.症例はNoonan症候群を基礎疾患に持つ2歳の女児である.B前駆細胞性急性リンパ性白血病に対する寛解導入療法の経過中に肥大型心筋症と診断され,プロプラノロールの内服が開始された.寛解導入療法の終了時に回復の傾向がみられた血球数が再度減少に転じ,骨髄検査では芽球はないものの低形成であった.プロプラノロールによる薬剤性汎血球減少症を考慮し同薬を中止したところ,血球は速やかに回復し骨髄像は正形成となり寛解を確認できた.化学療法中に造血抑制が遷延する場合,併用薬物による汎血球減少症を鑑別に挙げ,原因薬物の早期除去を考慮することは重要である.

  • 小泉 奈美, 植木 英亮, 池田 弘之, 野口 靖, 五十嵐 俊次, 角南 勝介
    2018 年 55 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル フリー

    化学療法に伴う免疫抑制時にGordonia属による菌血症を発症した3歳男児例を経験した.B前駆細胞性急性リンパ性白血病の中間維持療法中,7日間持続する発熱のため入院加療とした.中心静脈ダブルルーメンカテーテルより採取した血液培養で両ルートに同一菌の発育を認めた.臨床症状と合わせると真の菌血症と考えられ,カテーテル感染に起因した菌血症の可能性が高いと考えた.起炎菌は当初Corynebacterium様と報告されたが,感受性結果がCorynebacteriumと一致せず,後に16S rRNA解析の結果からGordonia属と同定された.カテーテル抜去と5週間の抗菌薬投与により治癒し得た.Gordonia属感染症は免疫不全者では重篤となる場合もあるが,細菌培養のみでは診断困難である.Corynebacterium様菌が検出された際には,必要に応じて16S rRNA解析を行うことが診断に重要であると考えられた.

  • 五百井 彩, 佐藤 真穂, 中西 達郎, 辻本 弘, 樋口 紘平, 清水 真理子, 澤田 明久, 安井 昌博, 井上 雅美
    2018 年 55 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル フリー

    慢性活動性Epstein-Barrウイルス感染症(chronic active EBV infection; CAEBV)による血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic lymphohistiocytosis; HLH)の8歳男児を報告する.ステロイド治療や多剤併用化学療法に不応でHLHの病勢が抑えられず当院へ転院した.化学療法を工夫してもなお病勢は悪化した.母親からの緊急末梢血幹細胞移植(peripheral blood stem cell transplantation; PBSCT)を施行した.移植前処置後解熱し,全身状態は改善した.移植後18日目に完全キメラを確認し,EBV-DNA量は正常化して寛解に至った.CAEBVによるHLHに対してステロイドや多剤併用化学療法が無効の場合,速やかに造血幹細胞移植を決断すべきである.

  • 窪田 博仁, 梅田 雄嗣, 上月 景弘, 川口 晃司, 加藤 格, 平松 英文, 山﨑 俊成, 小川 修, 稲木 杏吏, 若林 大志, 絹谷 ...
    2018 年 55 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル フリー

    症例はvon Hippel-Lindau病の女児で,6歳時に全摘した右副腎腫瘍の組織所見より褐色細胞腫と診断された.13歳時に大動脈下大静脈間に傍神経節腫,多発骨転移再発を認めた.大動脈下大静脈間の腫瘤摘出後にcyclophosphamide-vincristine-dacarbazine療法を7コース施行したが効果を認めなかったため,自家造血幹細胞救済を併用した131I-MIBG(metaiodobenzylguanidine)大量療法を2回行った.大量療法後,血中カテコラミン値は正常化し,123I-MIBGシンチグラフィで多発骨転移巣の集積の低下を認め,治療後3年間の無増悪生存中である.131I-MIBG大量療法は切除不能な悪性褐色細胞腫に対して安全に施行でき,有効性が期待できる治療と考えられた.

  • 中川 俊輔, 岡本 康裕, 児玉 祐一, 西川 拓朗, 田邊 貴幸, 河野 嘉文
    2018 年 55 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル フリー

    再発髄芽腫に対するtemozolomide(TMZ)の報告は本邦ではまだない.症例は6歳の男児で,小脳原発の高リスク髄芽腫(desmoplastic type,術後の脊髄MRIで播種病変あり)と診断された.脳腫瘍摘出術と放射線照射後に寛解を確認した.術後化学療法(ifosfamide, cisplatin, etoposide)と自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法(busulfan, melphalan)を行った.術後24か月後のMRIで右側脳室,右側頭葉,左小脳半球に腫瘤性病変を認め再発と診断した.欧米からの有効性があるという既報を参考に,TMZ(150 mg/m2/日×5,4週間毎)の内服で治療を開始した.腫瘍は残存しているが縮小傾向で,再発後28か月が経過し,TMZを30サイクル行った.副作用もほとんど認めず,良好なQOLを維持できている.TMZは髄芽腫の再発に対する化学療法として有用な可能性がある.

  • 穂坂 翔, 城戸 崇裕, 八牧 愉二, 福島 紘子, 小林 千恵, 福島 敬, 小野 健太郎, 新開 統子, 増本 幸二, 櫻井 英幸, 須 ...
    2018 年 55 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル フリー

    Wilms腫瘍の放射線治療開始前に移動性精巣が確認され,緊急手術により照射野外である陰嚢内に固定し遅滞なく治療を継続できた症例を経験した.

    症例は3歳男児.Wilms腫瘍ステージIIIと診断され,日本Wilms腫瘍スタディグループプロトコールに則り腫瘍摘出術,術後化学療法,術後全腹照射を施行された.放射線治療開始前の画像検査,および身体所見で偶発的に移動性精巣が確認され,緊急手術により照射野外である陰嚢内に固定し遅滞なく治療を継続できた.

    小児の移動性精巣は停留精巣と異なり一般的には手術適応がない.一方,小児がんなどの基礎疾患に対して腹部照射を予定している症例において停留精巣や移動性精巣が併存していると,不要な性腺被曝や将来的な男性不妊が生じる可能性がある.腹部照射を行う際には特に移動性精巣の有無について慎重に確認する必要がある.

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