日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
Print ISSN : 2187-011X
ISSN-L : 2187-011X
原著
小児病棟に入院する小児がんの子どもの生活に対する家族の意識調査
入江 亘長谷川 大輔神谷 尚宏永瀬 恭子吉川 久美子関冨 晶子天野 こころ石井 里奈芹澤 裕子坂本 代喜江大野 尚子菅家 美和田村 妙子真部 淳石田 也寸志平田 美佳細谷 亮太
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2018 年 55 巻 1 号 p. 7-14

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抄録

小児がんの子どもは治療のため長期の入院を要するが,入院生活の実態を家族側から検討した研究はほとんどない.そこで,入院生活の実態とそれに対する家族の考えを明らかにするため,家族への横断的質問紙調査を行った.2004年4月から2009年10月の間に当院に入院したことがある43名の小児がんの子どもの家族から回答を得た.22家族(51%)は入院中のテレビ視聴が制限されていると感じていたが,入院前のテレビ視聴時間や子どもの年齢はその感じ方に影響を与えていなかった.テレビ視聴が制限されていると感じる家族は,子どもが気分転換できずにストレスがたまっていると回答していた.携帯電話の所有率は同世代の平均よりも高く,所有していた子どもの半数以上は,入院を契機に購入していた.病院食については,入院中に食事の持ち込みが禁止されていて「困って」いたと回答していた家族の78%が「子どもが病院食を全く食べない」と捉え,持ち込み食を希望する回答が寄せられた.また,家族の63%は子どもの食事の嗜好に変化が生じたと感じており,塩味や濃い味を好む傾向があった.本調査から,病棟規則でメディアや持ち込み食を一律に禁止するよりも上手に利用するメリットがある可能性が示唆された.モバイル機器の進化などにより生活スタイルが日々変化することを考慮し,時代に即した柔軟な対応が小児がんの子どもの入院生活の質向上につながる可能性がある.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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