日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム4: 小児の血栓症
わが国における小児遺伝性血栓症の診断と治療
石村 匡崇市山 正子落合 正行堀田 多恵子康 東天大賀 正一
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2018 年 55 巻 5 号 p. 371-375

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抄録

血栓塞栓症は遺伝性素因,基礎疾患を背景に脱水や感染,外傷を契機に発症し,重篤な後遺症を残す予後不良な疾患である.遺伝性素因として凝固因子異常(FV Leiden/FII G20210A)や凝固調節因子(プロテインC:PC,プロテインS:PSおよびアンチトロンビン:AT)欠損が知られている.わが国で小児遺伝性血栓症と診断された患者の約70%は凝固調節因子欠損症(PC 45%,PS 15%,AT 10%)である.その多くは生後2週間までに発症した新生児PC欠損症である.

遺伝性血栓症を疑う契機は,若年発症あるいは繰り返す深部静脈血栓症,電撃性紫斑病(とくに新生児期)および血栓症の家族歴を有する場合である.小児は凝固因子と凝固調節因子の活性が生理的に低く,新生児期はとくにばらつきが大きいため,遺伝性血栓症を単独の活性値測定のみで予測することは難しい.確定診断のためには遺伝子検査を必要とするが,ビタミンK依存性因子で半減期の短いPC/PS/血液凝固第VII因子FVIIを同時に測定し,年齢基準値と比べ低下している場合や,因子活性が相対的に乖離している場合は遺伝子解析を積極的に進める.治療については低分子ヘパリンやワルファリン,不足する凝固調節因子目的に新鮮凍結血漿輸血を行う.補充療法として活性化PC製剤やAT製剤も使用可能である.電撃性紫斑病を繰り返す重症例には長期的な補充療法の検討が必要であり,肝移植による根治療法も行われることがある.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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