2018 年 55 巻 5 号 p. 376-381
2016年4月,大阪市鶴見区にオープンした「TSURUMIこどもホスピス(TCH)」は,病院でも福祉施設でもない,地域に根差した小児緩和ケアの実践を行うコミュニティ型の子どもホスピスである.子ども自身が病気のことを忘れ,孤立せず社会の一員であることを実感して生活できるよう,地域市民も巻き込んで取り組んでいる.
TCHが対象とするのは,「生命を脅かす病気(LTC)の子どもとその家族」である.とくに,病状が深刻なため家族生活が阻害される状況にある子どもと家族は優先的に利用でき,パーソナルケアを軸にしたプログラムや環境を用意している.開設当初に実施した個々の利用者のニーズヒヤリングでは,急性期,不安定期にある家族と比較的安定度が増した家族が持つニーズに特徴的な差異があり,それらはTCHの中核とするパーソナルケアの重要性を裏付けるものであった.
今後,子どもホスピスとしてのケアの取り組みの幅を広げ,その質を高めるため,病院,自宅以外のもう一つの選択肢を目指す場として,多くの関係者へのホスピスの理解と医療機関との連携が課題になる.子どもの死に焦点化するのではなく,その子の「命の尊厳」に光を当て,その子の「生きる」ことと家族が強く生きようとする支えの一部になるよう,コミュニティ型子どもホスピスが果たす役割と展望について述べる.