2019 年 56 巻 1 号 p. 40-45
終末期に家族と共に自宅で暮らすという願いを叶えることは,小児がん患者においても重要な取り組みである.症例は3歳の男児.左胸腔内の巨大腫瘤で発症した胸膜肺芽腫で,外科療法や自家末梢血幹細胞移植を含む化学療法で治療を終了した後早期に再発した.再発後は治療抵抗性で胸腔内腫瘍の急速な増大により呼吸不全状態となった.Irinotecanとcisplatinの胸腔内投与が奏功し,腫瘍摘出術と放射線照射後に退院が実現できた.しかし,照射野外の横隔膜下面より腹腔腫瘍で再々発した.家族の希望により急遽在宅緩和ケアに移行したため,移行時の連携準備不足で在宅ケアの継続が一時危ぶまれた.その後,病院主治医と在宅医相互の情報共有により役割分担を明確にすることで,最終的に自宅での看取りに至った.終末期を自宅で過ごす患者と家族の願いを叶える上で,在宅医療関係者との密な連携を速やかに構築することが重要であると考えられた.