次世代シークエンサーによる小児がんの遺伝子解析が実施され,その10%は,がん素因遺伝子の生殖細胞変異が原因であることが明らかになった.Wilms腫瘍の生存率は改善し,90%に達している.しかしながら,24%の患者は重度の晩期障害を経験する.WT1は腎発生のマスター遺伝子なので,その生殖細胞変異はWilms腫瘍だけでなく,慢性腎臓病の原因になる.慢性腎臓病とそれが進展した終末期腎不全は,手術,放射線照射,化学療法の有害事象であると同時に,WT1生殖細胞変異がその発生に関与することがある.その場合,腫瘍自体ではなく,終末期腎不全が,死亡原因になることが多いので,対策が重要である.WT1生殖細胞変異保因者を遺伝子検査により確定し,サーベイランスにより,無症候の腫瘍を小さいうちに発見し,腎温存手術を実施する.これにより,終末期腎不全を含む晩期障害の軽減を図る取り組みが必要である.がん素因遺伝子変異(病的バリアント)保因者の遺伝カウンセリングと遺伝子検査は,小児がんの早期発見・治療により,晩期障害や予後の改善につながると期待される.