日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム9: 小児がん治療における特殊な重症感染症シリーズ: ①抗酸菌
メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(MSMD; Mendelian Susceptibility to Mycobacterial Disease)
~これまでの流れから最近の話題まで~
浅野 孝基岡田 賢
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2019 年 56 巻 5 号 p. 379-387

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抄録

メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(mendelian susceptibility to mycobacterial diseases; MSMD)は,BCG,非結核性抗酸菌,サルモネラなどの細胞内寄生菌に対して選択的に易感染性を示す原発性免疫不全症である.患者では,本来弱毒菌であるMycobacterium bovis BCGなどに対して易感染性を示す一方で,細菌やウイルスなどの他の病原体に対する免疫能は原則的に保たれていることが特徴とされる.一般的に,細胞内寄生菌の排除には,単球,マクロファージ,樹状細胞とT細胞,NK細胞との連携が重要である.特に,インターロイキン12やI型インターフェロンの産生に関わるシグナル経路が重要とされ,これらの機能障害がMSMD発症につながる.1990年代後半にMSMD発症に関わる責任遺伝子の同定がなされて以来,遺伝子解析技術の進歩に伴い,現在までに14の責任遺伝子の同定がなされている.近年,BCGワクチン接種後のBCG感染症が問題視されており,実臨床においてもMSMDを認識して対応する必要性が高まっている.本項では,MSMDの疾患概要から最近の話題までを概説し,本症に対する知識の整理を行いたい.

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© 2019 日本小児血液・がん学会
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