日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
肝細胞癌との鑑別が困難だった肝芽腫の一例
大久保 龍二福澤 太一新妻 秀剛和田 基仁尾 正記
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キーワード: 肝芽腫, 肝細胞癌, 肝生検
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2021 年 58 巻 1 号 p. 50-54

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抄録

症例は11歳女児.貧血と高脂血症の指摘を受け近医を受診した際に腹部腫瘤を触知し,画像検査で肝腫瘍が認められ当院紹介となった.造影CT検査で腫瘍は右葉からS4に位置し,画像診断はPRETEXT IIIであった.腫瘍は早期相で肝実質より濃染し,平衡相でwash outされた.AFP値は1394 ng/mLだった.年齢,画像所見,AFP値から肝芽腫より肝細胞癌を強く疑い,生検に伴う腫瘍播種を懸念し一期的に拡大右葉切除を行った.病理診断は肝芽腫(well differentiated subtype)であった.肝細胞癌での生検は播種などが懸念されるが肝芽腫における術前化学療法は有用であることが知られている.そのため,原発性肝腫瘍における生検前の鑑別は極めて困難ではあるが生検の可否は個々の症例に応じて慎重に判断すべきと考えられた.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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