日本小児血液・がん学会雑誌
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総説
小児期に発症する遺伝性腫瘍について
中野 嘉子熊本 忠史
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キーワード: 小児がん, 遺伝性腫瘍
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2021 年 58 巻 2 号 p. 124-131

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抄録

小児がん症例の10%近くが,cancer predisposition geneの病的バリアントをもつ遺伝性腫瘍であり,ゲノム医療の普及により診断される機会も増えつつある.本稿では,小児遺伝性腫瘍の臨床における課題について概説する.遺伝性腫瘍の診断は,それに基づいた治療選択やサーベイランスといった介入により予後改善につながることが期待される.一方で,その診断は,患者や家族の心理やライフイベントにも様々な影響を及ぼすため,遺伝学的検査やサーベイランスの実施は対象者に不利益が伴う可能性もある.また,保険診療の対象となっていない事項も多く,日本小児血液・がん学会専門医研修施設に対して実施したアンケート調査の結果からも,遺伝性腫瘍の診療の障壁の一つであることが示唆された.遺伝性腫瘍の小児患者に対する診療の均てん化と充実のためには,保険制度や家族への心理的ケア,症例登録制度などを含めた医療体制の整備,それを推進する根拠となるエビデンスの構築が求められる.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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