日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
当院における血友病保因者の現状と課題
南條 由佳佐藤 篤早坂 広恵渡辺 裕美名古屋 祐子小川 真紀鈴木 資鈴木 信小沼 正栄今泉 益栄
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キーワード: 血友病, 保因者, 出血, 出産, 遺伝
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2021 年 58 巻 2 号 p. 149-155

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抄録

血友病診療は日々進歩しているが,血友病保因者をめぐる課題は残されている.近年,血友病保因者の出血傾向が注目されている.血友病保因者支援へ向け,当院に通院している血友病患児の母親に対し,出血傾向の有無,出産時の状況について調査を施行した.確定保因者14名,推定保因者9名の計23名に聞き取り調査を施行し,うち17名の凝固因子活性を測定した.凝固因子活性測定を実施した17名中8名で第VIII因子あるいは第IX因子活性が40%未満であった.確定保因者の半数以上に抜歯後止血困難,月経過多がみられた.出血傾向の有無と凝固因子活性には明らかな相関は認められなかった.確定保因者14名中8名が出産時,産後出血が多かったと自己申告し,うち4名が分娩時1000 mL以上の大量出血を来し,2名が輸血を施行されていた.輸血を施行された2名は非妊娠時の凝固因子活性は40%以上であった.共に家系内に血友病患者が存在したが,保因者である可能性について伝えられておらず,事前の理解と準備なしに出産し,出血多量で輸血を要した.血友病保因者の中には出血症状に困っている女性が予想以上に多くいることが明らかになった.保因者が医療者から十分な説明を受けていない場合もまだ多いと思われる.血友病診療に携わる医療者が保因者へ十分な説明や支援を行うと共に,産科医や新生児科医と連携し出産時のリスク軽減に努めることが保因者の心理的負担軽減にもつながり,重要と考えられる.

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