日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
二度の造血幹細胞移植後合併症の治療中に症候性胆石症による肝障害を来した急性骨髄性白血病の女児例
佐藤 智信遠藤 愛杉山 未奈子寺下 友佳代長 祐子井口 晶裕
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2021 年 58 巻 2 号 p. 156-159

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抄録

造血幹細胞移植(HSCT)により胆石症発生のリスクが上昇することが知られている.今回2度の移植を経た後,広汎性慢性GVHDの経過中に症候性胆石症による肝障害を呈したAMLの女児例を経験したので報告する.2度目の骨髄再発を来した後にHLA半合致末梢血幹細胞移植が施行され寛解を維持した.移植から1年後に腹痛および肝胆道系酵素の上昇が出現した.広汎性慢性GVHDによる肝障害が疑われたが,腹部超音波検査で胆嚢内に複数個の結石を認め,症候性胆石症と診断された.その後保存的治療で軽快したため定期的に腹部超音波検査を行いながら経過観察をしている.HSCT後の小児患者における胆石形成のリスクとして,複数回の移植,HLAの不一致,GVHDなどが報告されている.複数のリスク因子を有するHSCT後の症例に対しては,簡便で非侵襲的な腹部超音波検査を積極的に行うことを考慮する必要があると考える.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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