日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
心原性ショックと高度腎不全で発症し,体外循環と化学療法を併用して救命できた神経芽腫
下村 育史中川 俊輔棈松 貴成櫨木 大祐児玉 祐一西川 拓朗岡本 康裕河野 嘉文
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2021 年 58 巻 2 号 p. 166-170

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抄録

重篤な心不全と腎不全で発症する神経芽腫は稀である.症例は2歳の女児.上気道炎罹患後に心原性ショックと腎不全を来し,経皮的心肺補助と持続血液濾過透析を開始した.経皮的心肺補助離脱後に高血圧を認め,造影CTで左副腎腫瘍を認めた.尿中vanillylmandelic acid,homovanillic acid,血中neuron specific enolase,カテコラミンが高値で,I123-MIBGシンチで腫瘍に一致する集積を認めた.骨髄に異常細胞を認め,神経芽腫と診断した.また,造影CTで左右の重複腎動脈を認め,両側の尾側の腎動脈起始部に狭窄を認めた.レニン,アルドステロンが高値で,腎血管性高血圧と診断した.神経芽腫と腎血管性高血圧の合併が,重篤な高血圧性急性心不全と過度な腎血管収縮による腎不全を引き起こしたと考えた.心毒性を考慮し治療強度を軽減した化学療法を開始すると,高血圧と腎不全が改善し,持続血液濾過透析を離脱できた.重篤な高血圧性心不全や腎不全で発症し,体外循環に依存した状態でも,速やかに神経芽腫に対する化学療法を開始することは,症状の改善に有用な可能性がある.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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