日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
Print ISSN : 2187-011X
ISSN-L : 2187-011X
症例報告
タクロリムスの血中濃度を低下させるためにフェニトインを使用した1例
渡壁 麻依荒川 ゆうき柳 将人森 麻希子藤永 周一郎野村 耕司康 勝好
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 58 巻 2 号 p. 160-165

詳細
抄録

我々はタクロリムス(Tac)血中濃度上昇に対し,フェニトイン(PHT)が有効と考えられた1例を経験した.症例は9歳女児.急性骨髄性白血病と診断し,化学療法を行ったが,寛解に至らず,骨髄破壊的前処置による同種造血細胞移植を行った.移植後20日目に生着を確認したが,移植後33日目から右季肋部痛と軽度肝胆道系酵素の上昇を認め,肝類洞閉塞症候群と診断した.移植後38日目にTacを中止したが,移植後40日目にTac血中濃度は34.6 ng/mLと上昇した.Tacは血液透析で除去困難なため,薬物相互作用による血中濃度の低下を期待しPHTを投与した.PHT開始翌日にはTac血中濃度は18.4 ng/mLとなり,以降も順調に低下した.Tac血中濃度上昇時にPHT投与は有効な選択肢となる可能性がある.

著者関連情報
© 2021 日本小児血液・がん学会
前の記事 次の記事
feedback
Top