日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム6: 非腫瘍性血液疾患診療のupdate
小児免疫性血小板減少症(ITP)の病態生理と臨床課題および今後
東川 正宗森 麻希子石黒 精日本小児血液・がん学会血小板委員会
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2021 年 58 巻 3 号 p. 233-239

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抄録

ITPは血小板の破壊と産生障害により血小板減少をきたす自己免疫性疾患である.小児ITPはウイルス感染などが契機となり,抗原提示細胞から血小板抗原由来の潜在性ペプチドがCD4+ T細胞に提示され,反応したB 細胞から産生される自己抗体により発症する.小児ITPに対してエビデンスがある治療は大量ガンマグロブリン療法,副腎皮質ステロイド,トロンボポエチン受容体作動薬,リツキシマブ,脾摘の5つである.ITPの病態に基づいて,それぞれの薬剤の作用部位が解明されてきている.小児ITPの多くは自然治癒するが,1)治療対象患者の選択基準,2)初期治療の選択,3)初期治療に抵抗・難治例に対する治療,4)患者・家族の健康に関連した生活の質(HRQoL)を考慮した治療,5)新規薬剤導入後の脾摘の位置づけが課題である.欧米では,血小板数にかかわらず出血の重症度に基づいて治療が行われている.出血の重症度評価には,Buchanan出血Gradeが多用されている.Buchanan分類のGrade 0~2は無治療経過観察,Grade 4,5は治療を行うことに異論は少ない.Grade 3を治療するか否かは今後の課題である.血小板数に生活様式を合わせるのでなく,患者のHRQoLを改善する治療を選択できる時代となっている.小児ITPの病態生理,臨床的課題,ASH 2019 ITPガイドラインと慢性ITPに対する治療について概説した.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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