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中谷 諒, 梅原 直, 小野 林太郎, 足洗 美穂, 吉原 宏樹, 細谷 要介, 浦山 ケビン, 長谷川 大輔
2021 年58 巻3 号 p.
263-268
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
ジャーナル
フリー
背景:集中治療を受けた小児がん患者についての情報は限られており,予後への影響など臨床的意義は明らかではない.本研究は集中治療が小児がん患者の予後に与える影響について明らかにすることを目的とした.方法:2003年11月–2017年12月の間に当院に入院した0–15歳の小児がん患者を集中治療(人工呼吸器,昇圧剤投与,腎代替療法)実施群と非実施群に分けて後方視的検討を行った.結果:小児がん312例中,集中治療は40例(13%)に実施された.集中治療実施群は非実施群と比べて造血細胞移植例(p<0.01)と再発例(p<0.01)が有意に多かった.集中治療実施群の小児がん診断後1年生存率は非実施群と比較して有意に低く(68% vs. 97%, p<0.01),主な死因は原疾患の増悪であった.集中治療実施群のうち人工呼吸器と昇圧剤の併用例は単独使用例よりも予後不良であった.多変量解析を行ったところ,集中治療が実施された小児がん患者の診断後1年生存は有意に不良であった(p<0.01).結論:集中治療を受けた小児がん患者の予後は不良で,治療介入を要する臓器が複数に及ぶことの重要性が示唆された.合併症よりも原疾患の増悪が死因として多かったが,小児がん患者では集中治療を要する状況が予後に悪影響を及ぼすことが示唆された.
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馬場 みのり, 阿部 咲子, 渡辺 輝浩, 小川 淳
2021 年58 巻3 号 p.
269-274
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
ジャーナル
フリー
背景:近年,治療関連二次がんの解明が進んでいるが,その経過や予後に関する報告はまだ少ない.方法:1980~2010年に当院で治療した,診断時18歳未満の小児603例を後方視的に調査した.結果:18例に治療関連二次がんを認めた.原疾患は急性白血病が最多で11例であった.二次がんは,造血器腫瘍5例,甲状腺癌3例,乳癌3例,消化管癌3例,骨軟部腫瘍2例,腎癌1例,胸膜腫瘍1例であった.原疾患診断から治療関連造血器腫瘍診断までは中央値6年6か月(3年3か月~15年4か月),治療関連固形腫瘍診断までは中央値13年11か月(4年4か月~26年8か月)であった.発見の契機は,定期診察9例,自覚症状8例,剖検での判明1例であった.治療関連造血器腫瘍のうち4例が造血幹細胞移植を施行され,治療関連固形腫瘍のうち12例が,一次癌として発症した場合と同様の標準治療を受けていた.治療を受けなかった2例は,確定診断前に死亡していた.死亡は5例で,死因は治療関連造血器腫瘍2例,治療関連固形腫瘍2例,原疾患の再発1例であった.生存者の中には早期発見され標準治療を受けたにもかかわらず,2年後に脳転移を認めた乳癌症例を認めた.結語:二次がんの予後改善には早期発見が必要であるが,それだけでは限界があり,病因のさらなる解明や新たな治療法の開発,二次がんリスクを軽減した原疾患治療の開発が必要である.
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田崎 牧子, 土屋 雅子, 荒木 夕宇子, 丸 光惠, 齋藤 正博, 富岡 晶子, 米本 司, 高橋 都
2021 年58 巻3 号 p.
275-282
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
ジャーナル
フリー
【目的】本研究の目的は,小児期・AYA期発症がん経験者の性・生殖に関する情報源とその満足度,情報および情報源のニーズを明らかにすることである.【方法】0~29歳までにがんの診断を受けた20歳以上の者を対象に,無記名自記式インターネット調査を実施した.質問内容は,これまでの性・生殖に関する情報源とその満足度,情報および情報源のニーズである.【結果】有効回答数は107名,調査時平均年齢は31.2歳であった.これまでの情報源は,友人,学校,インターネットが多く(74%~81%),医師(34%)や看護師(17%)は少なかった.情報ニーズは,病気や治療が生殖に及ぼす影響とその対策,恋人やその家族への病気開示,恋人関係や子どもを持つことに関する体験談が上位であった.情報源のニーズは,インターネットや冊子・パンフレット(約50%),同病者や医師(約40%)等であった.【考察】小児期,AYA期発症がん経験者の性・生殖に関する情報ニーズには,これまで着目されてきた生殖に関する内容だけでなく,恋人や家族への病気開示や体験談があることが示された.情報源のニーズは,インターネットや医療者等多様であることが示され,経験者のニーズに合った情報提供が必要である.また,経験者は現状以上に医療者から生殖に関する情報を望んでおり,医療者による情報提供支援体制構築への努力が必要と考えられた.今後は,経験者の情報ニーズの充足度調査,QOL向上に寄与する情報提供支援の検討が求められる.
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土屋 研人, 土居崎 小夜子, 山下 大紀, 北澤 宏展, 秋田 直洋, 坂口 大俊, 吉田 奈央, 濱 麻人
2021 年58 巻3 号 p.
283-286
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
ジャーナル
フリー
症例は3歳男児.前駆B細胞性急性リンパ性白血病(BCP-ALL)と診断し,JPLSG ALL-B12に登録して治療し,G分染法にて染色体29本の低二倍体(near haploid)を認め,第1寛解期での同種造血細胞移植適応となった.寛解導入療法後に第1寛解,早期強化療法後に微小残存病変陰性を確認し,強化療法後にフルダラビン100 mg/m2,シタラビン8000 mg/m2,メルファラン180 mg/m2,全身放射線照射3 Gyによる強度減弱前処置(RIC)を用いて,HLA8/8アリル一致の父親から骨髄移植を施行した.移植後18日で生着し,重篤な合併症を認めず,移植後80日で退院した.移植後5.5年で無病生存している.near haploid BCP-ALLの予後は不良とされるが,微小残存病変陰性であればRICを用いた第1寛解期での同種造血細胞移植によって,生活の質を維持した長期生存が期待できる.
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池田 勇八, 森 麻希子, 荒川 ゆうき, 花田 良二, 康 勝好
2021 年58 巻3 号 p.
287-291
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
ジャーナル
フリー
骨髄異形成症候群(MDS)から急性骨髄性白血病(AML)へ進行する過程で急性リンパ性白血病(ALL)を併発したFanconi貧血(FA)の7歳女児例を経験した.下血を主訴に受診し,特異顔貌,血球減少からFAを疑い,染色体断裂性試験の結果FAと診断,RAEB-2に進展したため造血幹細胞移植の準備を進めた.発熱と芽球の増加を認め,骨髄検査でALL(L1)と診断した.髄腔内注射(MTX,Ara-C,PSL)と3剤(PSL,VCR,L-ASP)により寛解導入を行い,寛解に至ったがその後AMLへと病態が変化し,Flu,CPM,Ara-C,TBIを前処置とした,HLA血清型5/6座一致の臍帯血移植を行い寛解に至った.骨髄染色体検査よりALLはMDS,AMLとは異なるクローンであることが推察された.
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折居 恵以, 鈴木 涼子, 稲葉 正子, 穂坂 翔, 八牧 愉二, 福島 紘子, 福島 敬, 高田 英俊
2021 年58 巻3 号 p.
292-295
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
ジャーナル
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小児がんの4–5%に脊髄圧迫が見られ,多くの脊髄腫瘍は脊髄圧迫症状を契機に診断される.脊髄腫瘍はオンコロジックエマージェンシーであり,成人では治療開始前の神経障害の程度が治療後の神経学的転帰に関連すると報告されている.今回我々は,脊髄圧迫症状を契機に診断に至った小児腫瘍性疾患を4例経験した.対象症例は4か月~11歳であった.発症から画像診断までの期間は3~36日であり,腫瘍部位は硬膜外2例,硬膜内髄外1例,髄内1例だった.病理組織学的検査の結果Ewing肉腫,悪性ラブドイド腫瘍,急性骨髄性白血病と診断した.診断時に完全麻痺(Frankel A)であった1症例は運動機能の回復は得られなかった.一方,診断時に運動機能が残存していた(Frankel B, C, D)3症例では運動機能の回復(Frankel D)が得られた.完全麻痺に至る前の介入が神経学的予後の改善につながると考えられた.
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掛江 壮輔, 奥野 啓介, 前島 敦, 川場 大輔, 難波 範行
2021 年58 巻3 号 p.
296-300
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
ジャーナル
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症例は10歳の女児.6ヵ月前より誘因なく腰部と右下肢の疼痛と倦怠感が出現し,徐々に増悪し歩行困難となったため,当院紹介受診となった.レントゲン検査で右腸骨に骨膜反応を伴う浸潤性骨破壊像を認めた.MRI検査では右腸骨より後腹膜腔や殿筋内,仙骨へ浸潤する巨大腫瘤を認めた.組織生検でEwing肉腫ファミリー腫瘍と診断された.浸潤範囲が広く十分な切除縁を確保した腫瘍切除は困難と判断し,ビンクリスチン,ピラルビシン,シクロホスファミド,エトポシド,イホスファミドによる化学療法を5コース実施した後,メルファラン,エトポシド,カルボプラチンによる大量化学療法と自家末梢血幹細胞移植,放射線療法を行い,寛解が得られた.晩期合併症として内分泌障害や成長障害が認められたが,治療終了して7年後も再発なく経過している.外科的切除が難しいEwing肉腫に対して,大量化学療法は有効な選択肢である可能性がある.
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松尾 星弥, 鈴木 孝二, 吉川 利英, 山口 愛奈, 今村 好章, 小川 絵里, 岡本 竜弥, 谷澤 昭彦, 大嶋 勇成
2021 年58 巻3 号 p.
301-305
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
ジャーナル
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生後9か月の女児.左副腎腫瘍の精査目的に当科紹介となった.Children’s Oncology Group(COG)リスク分類で中間リスクの神経芽腫と診断され,多剤併用化学療法が行われた.化学療法5コースの寛解導入療法後に原発巣の摘出術および肝転移巣の生検術が行われた.原発巣および肝転移巣には病理組織学的に神経芽腫細胞の残存が確認されたが,術後1コースの化学療法で治療を終了とした.治療終了時の肝転移巣はMRI検査,MIBGシンチグラフィでも残存が確認されていたが,追加の治療を行わずに経過観察とし,治療終了後2年1か月,再発なく経過した.良好な生物学的因子を有する神経芽腫においては,たとえ病理組織学的に神経芽腫細胞の残存が確認されたとしても,寛解導入療法後に経過観察とすることも検討する必要があると思われた.
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櫻井 毅, 橋本 昌俊, 中村 恵美, 大久保 龍二, 福澤 太一, 小沼 正栄, 武山 淳二, 遠藤 尚文
2021 年58 巻3 号 p.
306-310
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
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症例は8歳女児.半年ほど前から咳嗽が出現し近医で加療されていたが,徐々に喘鳴が増強し,CT検査で気管内に腫瘍性病変を認めたため当科へ紹介された.CTでは気管内腔の腹側に造影効果を伴う充実性腫瘤陰影を認め,気管内の約80%を占拠していた.経時的な症状の増悪を認めたため準緊急で手術を施行した.頚部襟状切開でアプローチし,気管前面に至った.腫瘍の気管外への浸潤,リンパ節の腫大は認めなかった.気管楔状切除を施行し腫瘍を摘出した.病理結果は低悪性度の気管粘表皮癌であった.術後5年間経過したが,日常生活に支障なく過ごしており,気管支鏡検査では再発所見は認めていない.咳嗽のような非特異的気道症状であっても,経過中に増悪する気道閉塞症状を伴う場合は,気管腫瘍を念頭において精査する必要がある.また,気管粘表皮癌は完全切除されれば予後良好であり,気管楔状切除は有効な方法であった.
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内原 嘉仁, 梅田 雄嗣, 三上 真充, 山下 純英, 西田 南海子, 高木 雄久, 高橋 潤, 滝田 順子, 秦 大資, 塩田 光隆
2021 年58 巻3 号 p.
311-314
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
ジャーナル
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強力な集学的治療の導入により頭蓋内非胚腫性胚細胞腫瘍(NGGCT)の治療成績は飛躍的に向上しているが,長期生存例の治療関連二次がんの報告は限られている.症例は14歳女性,NGGCT高リスク群と診断され,多剤併用化学療法と放射線治療(全脳全脊髄照射22.4 Gy/14分割,局所照射27.2 Gy/17分割)を実施し,原疾患の再燃は認めていない.25歳時に骨盤MRIで第5腰椎脊柱管内に造影効果のある2 cm大の腫瘤を指摘された.翌年脊髄腫瘍摘出術を施行し,組織学的に神経鞘腫と診断された.過去に報告された神経鞘腫と比較して,照射から二次がん発症までの期間が短かった(10.3年vs 24.6年).多剤併用化学療法と放射線を併用し治療を強化したこと,または遺伝的素因が神経鞘腫の早期発症に関与している可能性が示唆された.
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山瀬 聡一, 平井 麻衣子, 谷ケ崎 博, 伊東 正剛, 中原 衣里菜, 金澤 剛二, 大熊 啓嗣, 高橋 桃子, 森岡 一朗
2021 年58 巻3 号 p.
315-319
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
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終末期医療では,きょうだい面会は家族が患児と過ごす貴重な時間を提供し,患児の入院により生じる家族関係の変化に対応する目的で大切である.その一方できょうだいには,面会により患児の外見の変化や死に直面することは強いストレスとなる可能性がある.今回,急性骨髄性白血病(AML)の終末期にいた患児の著しい外見の変化により,きょうだいの面会を行うことによる,きょうだい達への心理的影響が懸念された1例を経験した.症例は2歳10ヶ月でAMLを発症した女児.家族をドナーとして計4回の造血幹細胞移植を行うも,6歳3ヶ月時に亡くなった.終末期の患児は人工呼吸器管理下にあり,顔面に広範囲の血腫と治療の副作用による浮腫で外見が著しく変わっていた.そのため,患児の2人の姉によるきょうだい面会に際し,彼女らが受ける心理的影響が懸念され,多職種間で面会の方法や事前準備などが議論された.本症例は,終末期のグリーフケアのあり方を見直す契機となり,多職種チームとして家族を援助する方法を整備する機会となった.
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宮城島 沙織, 笹川 古都音, 竹林 晃, 家里 琴絵, 五十嵐 敬太, 山本 雅樹, 堀 司, 石合 純夫
2021 年58 巻3 号 p.
320-324
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
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【はじめに】小児がんのリハビリテーション(以下,リハ)では,治療中により生じる諸症状やリスクを考慮した関わりが重要となる.【症例】若年性骨髄単球性白血病の双胎症例.症例A,双胎第1子,男児,診断時0歳6ヶ月.生後1歳3ヶ月時に非血縁間骨髄移植施行された.寝返り以降の発達が停滞しており,9ヶ月時よりリハを行った.症例B,双胎第2子,男児,診断時0歳5ヶ月.生後7ヶ月時に非血縁間臍帯血移植施行となった.生後1歳1ヶ月時つかまり立ち以降の発達が停滞し,リハを行った.歩行獲得に難渋したが歩行練習を行い,退院後それぞれ1歳10ヶ月時,1歳6ヶ月時に立ち上がり,独歩を獲得した.【考察】本症例ではリスク管理上,床動作は狭いベッド上に限られたことで十分な粗大運動の経験を得られず,独歩獲得が遅れた原因となったと考えられた.患者個人を詳細に評価し,それぞれの状態に合わせたリハの提供が重要であった.
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