日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム7: 難治性固形腫瘍の新規治療法開発
小児悪性固形腫瘍肺転移の克服を目指したpatient-derived xenograft (PDX) モデルの構築
北河 徳彦宮城 洋平大津 敬後藤 裕明田中 祐吉
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2021 年 58 巻 5 号 p. 363-368

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抄録

小児悪性固形腫瘍の治療成績は向上したが,転移を有する患者の予後は未だ不良なことが多い.我々は肺転移を積極的に外科切除しているが,手術のみでは不十分なことも多く,新規治療法の開発が課題である.そこで我々は,実臨床に近い研究プラットフォームの開発とこれを用いた治療法の開発研究を進めるために,切除した肺転移巣を免疫不全マウスに移植し,patient-derived xenograft(PDX)を基盤とする肺転移モデルの研究を開始した.14例の肺転移巣(胸膜播種を含む)をNSGマウス皮下へ移植し,12例で樹立に成功した.腫瘍の種別(樹立数/移植数)は,骨肉腫(6/6),肝芽腫(1/2),ユーイング肉腫(1/1),悪性筋上皮腫(1/1),悪性ラブドイド腫瘍(1/1),肝細胞癌(1/2),卵黄嚢癌(1/1)であった.PDXの生着率は一般に高くないが,肺転移巣を用いたことが我々の高い樹立成功率に寄与している可能性がある.このうち骨肉腫とユーイング肉腫について,皮下PDXをプロテアーゼカクテルで分散しマウス尾静脈に注射することで,肺転移モデルの作製に成功した.腫瘍細胞がヒト,間質構成細胞がマウスというPDXの特性を活かして,皮下と肺転移巣それぞれのPDXで,マウスとヒトのトランスクリプトームを別々に評価し,腫瘍微小環境の視点から肺転移に特化した新規治療法の開発を目指す遺伝子発現解析を進めている.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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