日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
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原著
小児急性リンパ性白血病患児における認知機能の前方視的多施設協同研究
佐藤 聡美瀧本 哲也小阪 嘉之佐藤 篤湯坐 有希康 勝好角南 勝介種山 雄一堀 壽成太田 節雄松本 公一多賀 崇渡辺 新滝田 順子野村 恵子金兼 弘和陳 基明早川 晶福島 敬加藤 実穂大六 一志
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2021 年 58 巻 5 号 p. 424-431

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抄録

大量メトトレキサート療法やMTX髄注は知的機能に長期的に影響を及ぼしうる.我々は23施設と共同で2011年から2016年(登録期間2011年から2013年)にわたって小児急性リンパ性白血病の標準リスク群の患児への認知機能を検討する観察研究を行った.初回検査時年齢3歳から9歳の57名の登録があったが,4回の検査を完遂した解析対象は43名となった.ウェクスラー式知能検査を用いて,全般的知的能力(FSIQ),言語理解(VCI),知覚推理(PRI),ワーキングメモリー(WMI),処理速度(PSI)の得点を測定した.検査スケジュールは,寛解導入療法終了直後をベースラインとし,そこを起点に1年後,2年後,3年後の計4回であった.統計解析は,4つの指標得点(VCI, PRI, WMI, PSI)と4つの観測時点間(T1, T2, T3, T4)でANOVAを行った.全般的知的能力(FSIQ)の平均は,99.09(SD=14.72),99.26(SD=15.01),102.30(SD=11.08),101.12(SD=11.69)と正常の平均域で推移していた.T1では「言語理解」の指標得点が低く,T2以降は「ワーキングメモリー」の指標得点が低かった.今後は,これらの得点の推移と日常生活の困難を照合していく必要がある.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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