バイスペシフィック抗体薬エミシズマブは,第VIII因子製剤とは異なる臨床的特徴から患児・家族の生活の質(QOL)の向上への貢献が期待されるが,いまだ十分に検討されていない.当科でエミシズマブによる定期補充療法を開始した12例11家族を対象に,エミシズマブ選択の理由と開始後の患児・家族の症状や生活の変化について診療録より後方視的に検討を行った.その結果,エミシズマブ選択については出血のコントロール(3/11家族)より,むしろ血管確保の回避や補充回数の軽減(各々10家族)が主な理由であった.また興味深いことに,5家族においては通院頻度の減少や勤務時間調整の容易化という血友病患児の家族が有する生活上の問題の解決に向けた選択理由も認められていた.エミシズマブ開始後の変化では,出血予防・止血効果の向上(7/11家族),補充ストレスの軽減と出血への不安軽減(各々3家族),そして時間的余裕の増加(5家族)の4つのカテゴリーが抽出され,いずれもQOLの向上に本剤が貢献していることを示す内容であった.質的アプローチによる本研究においてエミシズマブは,患児ばかりでなく家族の精神的,時間的な負担軽減の視点からも期待され,そして有用であることが示唆された.血友病診療は家族を含めた包括的支援が重要であり,本研究からエミシズマブはこの点にも貢献していると考えられたが,症例を集積してさらなる検討が必要である.