がん細胞は正常細胞とは異なった代謝特性を利用し,エネルギー産生や核酸・アミノ酸・脂質の合成することで細胞増殖を促進する.これまでがん細胞は一律に好気的解糖を好んで利用すると理解されていたが,網羅的メタボローム解析や細胞レベルでの代謝フラックス解析などの解析技術の進歩により,癌種や遺伝子変異の違いさらにはがん幹細胞で異なる代謝特性を有することが明らかとなった.白血病細胞の生存・増殖に必要なエネルギー獲得機序も解明されつつあり,解糖系が白血病発症に必須である一方で,白血病幹細胞(LSC)の生存はミトコンドリアでの酸化的リン酸化(OXPHOS)によるATP産生に依存し,化学療法抵抗性はOXPHOS活性が相関することが報告されている.我々は難治性白血病のエネルギー代謝を細胞外フラックスアナライザーで分析し,メタボローム解析およびトランスクリプトーム解析を併用することで新規治療標的の同定を可能にした.また,BCL-2阻害剤ベネトクラクスとアザシチジンの併用療法(Ven/Aza)は,LSCのグルタチオンレベル低下とアミノ酸代謝阻害によるOXPHOS抑制が主な作用機序であるため,代謝解析でベネトクラクス薬剤感受性と相乗効果を有する併用薬の同定が可能である.今後はシングルセルメタボロミクス,リピドーム分析など更なる解析技術との融合で白血病エネルギー代謝を標的とした新たな治療薬の開発が期待される.