2022 年 59 巻 5 号 p. 370-375
治療には的確な診断が不可欠であるが,小児脳腫瘍診断はしばしば難渋する.小児脳腫瘍患者数は小児白血病患者に匹敵するが,細分類を含めると1疾患あたりの症例数は少なく,各施設の経験値が乏しくなることや,脳腫瘍の診断および治療に分子学的分類が必須となる中,各施設内で検証することが不可能であるためである.そこで小児がん中央病理診断を受けることが必須となる.そこでは複数の病理医で診断がなされ,髄芽腫や神経膠腫の分子診断なども行われる.また,2019年に保険収載されたがんゲノムプロファイリング検査は,脳腫瘍患者にとっても有意義な情報が得られる.ただし保険診療で行えるのは1回のみであるため,どの時点で検査するか留意する必要がある.付加的遺伝子異常による再発や悪性化を検出するには,再発時検体で検査することが推奨されるが,分子標的薬の効果が期待できる遺伝子異常を有することが推測できる症例(例:乳幼児神経膠腫のNTRK融合遺伝子等)などは初発時から検査することも検討すべきである.
小児脳腫瘍患者の中に,がんの易罹患性症候群(Li-Fraumeni症候群等)が含まれていることは知られていたが,近年がんゲノム解析を行う過程で指摘される例が増えてきた.臨床遺伝専門医とも連携しながら,遺伝カウンセリングや家族内検索,その後の患児のがん検診計画などを綿密に調整する必要がある.