日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム7:小児外科医・小児腫瘍医が知っておくべき種々の領域の固形腫瘍における治療・手術~最近の動向と今後の展望 II.脳・眼領域腫瘍
小児脳腫瘍に対する手術~摘出度と機能温存~
國廣 誉世
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キーワード: 小児, 脳腫瘍, 手術, 摘出度, 安全性
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2022 年 59 巻 5 号 p. 376-380

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抄録

小児脳腫瘍の手術は,安全で最大限の摘出が望まれるが,疾患に対する生命予後に関わる摘出度の役割を十分に理解して手術を行う必要がある.髄芽腫は,手術によって神経症状を悪化させる危険性が高い場合,無理な全摘出は控え,神経機能温存を優先した最大限の摘出を行う.術後腫瘍残存量1.5 cm2未満に対する全摘出の絶対的利点はないため,小さな残存腫瘍に対する摘出は行わない.上衣腫は,化学療法の効果が乏しく,全摘出が生命予後の改善に影響するため,長期的に改善されうる可能性や許容されうる範囲の神経症状の悪化は許容し,全摘出を優先する.Atypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT) は,安全な最大限の摘出が望ましいが,低年齢で腫瘍が大きく出血量が多いため,全摘出が難しく,手術死亡率も高いため,安全な最大限の摘出を向上させるNeoadjuvant chemotherapyが有効な場合がある.小児低悪性度神経膠腫に対して,神経機能温存を優先した手術を行い,遺伝子診断に基づいた治療方針を長期的に検討していく.小児の脳腫瘍手術においても,神経ナビゲーション,トラクトグラフィー,functional MRI,術中神経モニタリングなど発展により,より安全でより最大限の摘出を可能にしている.

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© 2022 日本小児血液・がん学会
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