日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
免疫性血小板減少症との鑑別診断を必要とした先天性血小板減少症の1例
中村 こずえ樋渡 光輝新戸 瑞穂佐藤 恭弘小山 隆之三牧 正和内山 徹石黒 精
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ジャーナル 認証あり

2023 年 60 巻 3 号 p. 266-269

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抄録

先天性血小板減少症は多くの遺伝子異常が報告されているが,慢性免疫性血小板減少性症(慢性ITP)と診断されている例も多い.症例は2歳男児で,発熱と出血斑で入院した.父方に血小板減少者があり,20年前に父は先天性血小板減少症(IT)の遺伝子検査を受けたが異常が認められなかった.入院時,血小板数1.6万/μLであったが,粘膜出血なく無治療で経過観察したところ,入院6日で39.6万となり退院した.抗カルジオリピン抗体(ACA)12 U/mLと軽度上昇を認め,退院時にはACA陽性を合併したITPと診断した.退院後に再び血小板数は減少して5~6万/μLとなり,ACA陰性化後も減少が続いた.血小板は正常大で形態異常は見られなかった.ITである可能性が考えられ,倫理委員会の承認を得て,3歳11か月時に患児と両親の遺伝子解析を行った.患児と父にANKRD26 c.-134 G>Aを認め,Thrombocytopenia 2(THC2)と診断した.先天性血小板減少症はITPとの鑑別に難渋することがあり,遺伝子検査が重要である.

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© 2023 日本小児血液・がん学会
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