日本小児血液・がん学会雑誌
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小児がんのための薬剤開発シンポジウム:小児がん領域での薬剤開発促進のために何をすべきか?
小児がん医薬品開発のハードルとその対策―製薬会社の視点から―
植木 一郎早川 穣
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2023 年 60 巻 5 号 p. 341-345

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抄録

近年,小児薬剤開発推進策が実施され,それらに対し機運と期待があがってきているが,製薬企業側の課題は未だ多く,今後も,行政・アカデミア・患者団体と協力し解決していく必要がある.現状データとしては,小児領域の海外承認品目中, 約7割以上が日本において未承認,また,国内未承認薬の約半数が,日本において開発未着手の状況である.近年 新薬開発の初期段階(新薬シーズの創出~Proof-of-Concept確立までの初期臨床開発)においては,欧米の新興企業が担っているケースが多く,小児がん医薬品開発においても国境という概念はなくなりつつあり,国内で完結する事例は稀となってきている.小児がん薬剤開発においては,この傾向は,より強く,小児がんの薬剤開発推進策を検討するには,日本企業・日本発の新薬開発という概念にとらわれることなく,海外新興企業であっても日本での開発に意欲を示したくなる施策が必要と考える.具体的なアイデアとして,透明性のある小児薬剤の開発スキーム,迅速な上市を可能とする制度設計,投資と事業継続に見合うリターンの確約が必要であり,そのためには,ガイダンスの発出,(既存の仕組みにとらわれない)薬事制度,金銭的補助(開発費の削減,薬価の手当て,税制上の優遇措置など)が想定される.本講演では,小児がん対策国民会議の日本・海外製薬企業メンバーで検討し,考えられうる,いくつかのアイデアを共有,日本の小児がん薬剤のアクセスをさらに高めるため,すべてのステークホルダーが引き続き協力し行動できる一助になればと考える.

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© 2023 日本小児血液・がん学会
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