2023 年 60 巻 5 号 p. 362-370
小児がん経験者への病気の説明および健康管理教育の現状と課題を明らかにすることを目的に,小児がん診療施設11施設の長期フォローアップ外来を担当する各施設1名の医師を対象に半構造化面接を行い,質的記述的方法でカテゴリー分析を行った.長期フォローアップ外来での病気の説明は,①病初期から正しい情報を伝え続ける患者教育の不十分さ,②患者の心理状態や社会生活に対応した病気の説明の実施,③自身の病気や健康に興味関心を持ち受診継続を続けるための動機付け,④小児がん経験者を取り囲む人々との病気の共有,⑤多職種での協力体制,⑥成人診療科・プラマリケア医との関係構築の困難さ,の6つのカテゴリーが抽出された.健康管理に関する患者教育では,①日々の生活習慣の改善に向けた機会の提供,②継続的受診のための支援,③健康への意識を高めるための正しい情報の伝達,の3つのカテゴリーが抽出された.また,担当医の思いとして,①小児がん経験者への共感性を持った関わり,②医師としての診療方針,の2つのカテゴリーが抽出された.解析結果より,長期フォローアップ外来担当医は,小児がん経験者の健康管理意識の向上のためには,病気の正しい理解と自律的な行動が求められると認識していることが明らかとなった.また,小児がん経験者の健康管理意識の向上を支援するツールの積極的活用に加えて,継続受診の勧奨,移行医療の推進が必要であると考えていた.