小児がん化学療法中発症虫垂炎の発生率は0.3–1.5%と低く,初期治療における保存的治療と手術治療の選択基準についてコンセンサスは得られていない.当科において化学療法期間中に発症した急性虫垂炎6例における虫垂炎の病期,治療法およびその転機について後方視的に検討した.初期治療として5例に保存的治療を,1例に腹腔鏡下虫垂切除術を行った.保存的治療群において化学療法遅延期間が長い傾向がみられた.保存的治療を行われた蜂窩織炎性虫垂炎2例中2例において虫垂炎再燃を認めたため虫垂切除術を要し,各々27日間と37日間の化学療法遅延を要した.初期治療として腹腔鏡下虫垂切除術を行った1例において創感染を認め,化学療法の合併症と考えられる膵炎を認めたが,化学療法遅延期間は5日のみだった.虫垂炎発症時に蜂窩織炎性虫垂炎を来している症例では保存的治療が効果的ではない可能性が示唆された.今後多数例での検討が望まれる.